童歌ワラベウタ――――幼歌オサナウタ











陽の翳った森は暗い。

ダンテは頭からかぶったケープ替わりの赤い布を小さな手できゅっと掴み、まごつく足を懸命に 動かした。先を歩く男――――紅眼の鬼人――――は、ダンテが追って来ていることを 確認しつつ歩いているらしい。歩調は緩やかだ。
がさり、とダンテが枯れ葉の絨毯の上に倒れ込んだ。葉に覆われて、地表に露出した木の根に 気付けなかったのだ。

「……ぅ、……っ」

泣きもせず、ばっと起き上がろうとしたのは、バージルに置いて行かれると思ったから。 けれど、バージルはダンテを放って行くことはなかった。

「来い」

短く言い、次の瞬間にはダンテを腕に抱き上げていた。バージルがそんなことをするとは 思っていなかったダンテは、目を瞬かせてバージルを凝視する。暗闇にもバージルの紅い瞳は 光って見えて、ダンテは一瞬見惚れてしまう。

「何だ」

不審そうなバージルの声。ダンテはぎくりとした。

「っ……ごめ……なさい……」

咄嗟に謝罪の言葉が口をついたのは、おそらく習慣からだろう。彼はいつも、母に叱られて ばかりいた。物心付いた頃には既にそうで、いつしか母と目が合っただけで謝罪するように なっていた。母と顔を合わせることに、恐怖を抱くようになっていた。
それでも、母だ。少しでも好かれたくて必死に家の手伝いをしたが、何も変わりはしなかった。 ただ、哀しみと淋しさだけが常に彼の側にあった。

幼い少年は、自分が震えていることに気付かない。少年を抱いているバージルは、当然だが 気付く。

「ダンテ、」

見ろ、とバージルが顎で行く手を指した。暗くてバージルの仕種はよく見えない。しかし ダンテはバージルの指した方向を正確に見た。空気で判る、と言うのだろうか。ダンテは 不思議とも思わずそちらにじっと目を凝らした。
バージルとダンテとは眼の造りが根本的に違う。バージルは暗闇でも見える眼を持っているが、 ダンテはそうではないのだ。

「何があるの?」

暗闇と、微かに木々の幹しか見えないダンテは、バージルを見上げて不安そうに言った。 バージルが目を細めた気がしたが、紅い瞳はすぐにダンテから外されてしまう。

「私の棲処すみかだ」

ぽつり、と。バージルが言って、そこに生い茂った草の幕をがさりと掻き分けた。向こう側は、 やはり暗い。洞窟になっているのだろうが、幼いダンテにはそこが何なのかすら判らない。

「…………」

怖い、と思った。バージルはここをねぐらと言ったが、どこまでも続く闇が触手を伸ばして 来そうな、引きずり込まれそうな気がしてダンテはふるりと震えた。
どうした、とバージルが訝る。無意識にバージルの服を掴んでいたらしい。やはり反射的に 謝罪して、手を離した。が、

「怖いか?」

バージルがダンテの手を掴み、紅い眼を近寄せて問うた。息が触れそうな程間近に、バージルの 体温がある。先刻からずっと触れていたことを今更になって認識し、ダンテの躰は震えることを やめた。

「バージルがいてくれるから、大丈夫」

独りではない。

そう思えば、暗闇も怖いものではなくなってしまう。

何故だろう。初めはバージルにすら恐怖を抱いていたというのに、今はバージルがいてくれれば 総てを“大丈夫”と言える。
実の父母すら与えてくれなかった“安堵”を、バージルはくれる。

バージルの手がダンテの頬に触れた。人よりも冷たい掌は、しかしダンテの知る誰よりも 暖かい。

気が付けば、涙を流していた。

バージルの指が、溢れる雫を拭ってくれる。けれど膚に息がかかるのを感じて、それが指では ないことにぼんやりと気付いた。舌、だ。塩辛いばかりの水を、バージルは舐め取っている のだ。

「っ……ばぁ、じ、る……」

やめて、とは言えなかった。バージルの息が、頬や目許を拭う舌が心地好かったこともあるが、 ダンテは咄嗟に息を飲んだからだ。
ひやりとしたバージルの手が、ダンテの服をずり上げて脇腹をなぞる。くすぐったさと、それに 紛れたぞくりとしたものに、ダンテは躰を強張らせた。

「……ゃあっ……?」

困惑して、バージルの紅い瞳をじっと見つめる。

「ばぁじる……?」

笑った気がした。何故かは判らない。しかし確かに、バージルは笑っている。

バージルが何をするつもりなのか、するすると服を脱がしていく手に、ダンテは幼いながらも 判ってしまう。しかしダンテは、不思議と嫌とは感じなかった。怖いとも思わない。
ダンテは暗闇の中でバージルを受け入れた。





言葉は、ダンテの漏らす荒い息と喘ぎのみ。男はどこまでも無口だった。

自分でも触れたことのない場所に、指を二本、突き込まれた。痛みに涙が溢れる。しかしその 涙も、つらいものではない。
ぺろ、と拭ってくれる、暖かな舌。
はふ、と息を吐くと、内に侵入した指がぞろりと動いた。くちゅ。見えない分、粘質の音が酷く 羞恥を煽る。しかもここは、音がやけに反響して聞こえるのだ。

「ぁ……ばぁじる……」

未知の感触は、けれど不思議と気持ち悪いとは思わない。ダンテは手探りでバージルの手首に 触れた。後孔に侵入していない手は、先刻からダンテの脚の間で震えている幼茎を弄っている。 気持ち良いのかどうかはダンテには判らないのだが、くすぐったいような感覚に腰が逃げを 打とうとする。それを阻止する為にか、バージルがダンテの幼茎の先端を軽く掻いた。

「ひぁんっ」

途端にダンテは悲鳴を上げ、腰を揺らめかした。バージルは味をしめたように先端ばかりを くにゅくにゅと弄る。ダンテはバージルの手首をぎゅうと握った。後孔をまさぐる指は、その間も 動きを止めていないのだ。蠢く指が内壁を柔く掻き、幼いダンテの官能を無理矢理引き出そうと する。そして、

「ぁあっ……!」

不意に明らかにそれまでと違う声が上がった。咄嗟にバージルの腕に爪をたててしまうが、 バージルは全く意に介していないらしい。見つけたばかりの箇所を、何度も指で突き上げられる。 その度に、腰が揺れあられもない声が喉をつく。

「あっ! あぅんっ……やぁあ……ッ!」

下肢が熱い。何かが込み上げるような感覚があるが、まだ射精をしたことのないダンテには、 その感覚が何なのか判る筈もない。
びくびくと躰が意思に反して跳ね、ダンテは堪らなくなってバージルにしがみついた。

「やだ……っあ……、こわい、よ……ばぁじるぅ……っ」

未知の感覚にただ恐怖するダンテの躰を、バージルは徐々に拓いていく。

大丈夫だ。

それまで沈黙を守っていたバージルが、ダンテの耳に吹き込むように囁いた。大丈夫だ、 怖くない。何の飾り気もない言葉に、ダンテは鼻をすんすんさせながら「本当?」と訊く。

「お前に嘘は言わん」

信じろ、とはバージルは言わない。しかしダンテは、ごく自然に笑みを浮かべていた。

大丈夫。バージルが怖くないと言うのだから、大丈夫だ。

信じる信じないではなく、ダンテは既にバージルに深く依存してしまっている。それを、 バージルが気付いているかどうかは判らない。

「ひゃあ……ッ!」

甲高い声を上げ、ダンテが幼茎から微量の精液を吐き出した。半透明の白濁は、しかし暗闇の 所為でダンテの目に触れることはない。
初めての射精に荒い息を繰り返しながら震えるダンテの、ふっくりと熟れた後孔からバージルの 指が引き抜かれる。少し腰を持ち上げられたダンテは、後孔に触れた熱い何かにびくりとした。

「っあ……ば……じ、なに……?」

闇に浮かぶバージルの紅い双眸が、くっと細められた。

「お前が欲しい」

判らないことを、バージルが言う。お前を呉れ、と。

あてがわれた熱い何かが、ぐ、とダンテのそこに入り込もうとする。ぴりっとした痛みが ダンテを襲うが、ダンテは逃げはしなかった。バージルの頭を抱き締めるようにしてしがみつき、 頬をすり寄せる。

「いい、よ……、バージルにあげる。だから、」

捨てないで。

楔を穿たれる衝撃と痛みに、その言葉は悲鳴となって消えた。
揺さぶられる。狭い内壁いっぱいにバージルが満ち、細い躰は衝撃に堪え切れずにがくがくと 震えた。精液を総て吐き出してしまった幼茎は、バージルに最奥を突き上げられる度、射精する ことも出来ずにじんじんと痛むばかり。しかし痛みはもう、溶けそうな程の熱さに侵されて 判らなくなってしまっていた。

「ひぅ……っあ、あっ……、……!」

もう何度目か判らない空っぽの射精。ダンテは無意識にバージルを締め付ける。その時、 ダンテの内壁にバージルが精を叩き付けた。

「! ア……ッ!」

ごぽり、と。精液が繋がったそこから溢れ出る。あまりに大量すぎて、ダンテの内では 受け止めきれなかったのだ。

「ばぁ、じ……る……」

くたりとバージルの肩に顔を埋めたダンテの耳に、低い囁きが吹き込まれる。

「これで、私のものだ」

ダンテは嬉しそうに笑い、意識を手放した。


















前?
次?
戻。


個人的にはやけに楽しかったという変態ぷりですが、いかがなものか…