蒼碧ブルー











拙い仕種。懸命な表情。頬は紅潮し、およそ醜悪といった単語からは程遠い。

バージルは少年の髪を味わうように梳きながら、その光景をじっと見下ろしている。少年は バージルの股座に顔を押しつけるようにして埋め、口にはバージルの猛ったものを頬張っていた。 無論、バージルが少年に強要したことだ。
口淫という言葉すら知らぬであろう少年は、口をいっぱいに開いてバージルのものを咥えている。 舌を使えというバージルの言葉に従って、懸命に舌を搦めてくるが、その動きはやはり拙い。 口での奉仕をさせたのは今が初めて(彼の精神が退行してから、という意味だ)なのだから、 これは至極当たり前のことである。バージルとしても、技巧を求めて強要したのではなかった。 これも教育の一つだと思っている。

ちゅぷちゅぷと、少年が舌を使う卑猥な音がする。必死なのだろうことは仕種や表情を見れば 判るし、これはこれで慾が猛る。しかし、決め手には欠けるのだ。
バージルは少年の耳を指でちょっと摘んだ。ぴくっとして、少年が目だけをこちらに向けた。 潤んだ双眸に、薄い笑みを口許に湛えた男が映り込む。

「もっと奥まで咥えろ。前に俺がしてやったようにな」

「ん、ん……っ」

頷く代わりにか、少年は瞼を上下させてバージルのものをより深く口内へ迎え入れた。苦しい らしく、きゅっと眉を寄せている。それでも、嫌だという言葉もなければバージルのそれから 口を離すこともしない。もとの従順さが戻っているのか、何にせよ、むやみに拒絶の言葉を 紡がれることを嫌うバージルには、良いことと思える。

少年は再度、舌を使い始めた。以前バージルが口で彼の陰茎を愛撫してやったとき、彼はあまりの 快感に喘ぎ震えるばかりで、達したときにはろくに理性など保っていなかった。それを思い出せと 言うのだから、我ながら酷だとバージルは思う。
もちろん、期待はしていない。これは教育なのだ。バージルが手取り足取り、きちんと教え込んで やらねばならぬ。





バージルの脚の間のものは、ダンテのそれとは比べ物にならぬ程大きく、逞しい。それを、 ダンテは今口いっぱいに頬張り舌で舐ぶっている。

「ぅ、ん、ふ……ん……っ」

バージルに言われるまま、口の奥まで咥えたまでは良かったが、これはひどく息が苦しい。 しかしダンテにはこの行為を中断するという選択肢は与えられておらず、ただ必死に舌を使う しかなかった。
前にしてやったように、とバージルは言った。確かに、これと同じことを以前バージルにして もらったことが、ダンテにはある。しかしバージルへは頷いて見せたものの、ダンテはそれを ほとんど覚えていなかった。ただひたすら、気持ちが良かったということしか記憶にはない。 つまりはそれが、バージルの要求なのだろうとダンテは思っている。

(きもち、よく)

バージルを満足させ得る技術がダンテにあるかといえば、判らないというのが正直なところである。 試したことがないのだから当然だった。ダンテがバージルのそれを口に咥えたのは、今が初めて なのだから。
しかし巧くはないらしいと、ダンテは何となく感じている。バージルはダンテを叱りこそしないが、 褒めることもしない。それにバージルのものは、熱くはあるがそれだけで、精を吐き出すには まだ程遠いようにダンテには思えた。だから、きっと自分は下手なのに違いない。

「ん……ぅ、ん……っ」

懸命に、ダンテはバージルの熱塊を舐める。ちゅぷりと粘質の水音が響くが、ダンテの耳に その淫靡な音は届いてはいなかった。

「ダンテ、舌の先でなぞるようにしてみろ」

バージルの声に、ダンテは夢中で頷いた。





拙いだけだった舌使いが、僅かに変わった。バージルの指示する通り、ダンテは一心に舌を 動かしている。学習力はまずまずといったところか。バージルはぱらりと額に落ちた前髪を 掻き上げた。
ダンテはダンテなのだ。口淫の技巧を覚えるのも、おそらくすぐに違いない。

「頭を上下に動かしてみろ。ゆっくりで良い」

ん、と吐息のような応答があり、バージルの言うままに少年が頭を上下させる。じゅぷ、と淫猥な 音が大きくなった。ダンテは意味も判らずに、ただバージルの指示に従っているだけなのだが、 やはり筋は良い。とは言え、すぐさま彼の口内へ射精してしまう程ではないが。
バージルは少年の頭を撫でてやる。

「そう、それで良い」

幼い弟は、バージルに褒められることがいたく嬉しいらしい。口付けを教えてやったときも、 そうだった。褒めれば褒めただけ、ダンテは嬉しそうに破顔しいっそう懸命になる。子犬が ぱたぱたと尻尾を振っているようだと、バージルは思ったものだ。今も、そう。
はふ、と息をもらした少年の頬は、先刻よりも紅潮しているようだ。眉間の皺はきれいに なくなっている。バージルは少年の癖のない髪を梳き、絹よりなお上等な感触(毎日バージルが 手ずから手入れをしているのだから、当たり前だが)を味わった。





バージルが褒めてくれた。ダンテは嬉しくなって、もっと褒めてもらいたくていっそう懸命に バージルのものを咥え込んだ。もちろん、バージルが指示したように、する。そうすれば バージルが褒めてくれるのだと、ダンテはしっかり学んでいた。

髪に絡む指の感触が心地好い。バージルの長い指はダンテの気に入りだ。その節の高い指が髪や 頬を撫ぜるのが、大好きなのだ。猫ならば、くるくると喉を鳴らしているだろう。上機嫌な ダンテは、現在行われ(強要され)ている行為の淫らさをまるで理解していなかった。
バージルに対し、ただ従順であるようにと己に科したのはダンテ自身だ。それは己を守る為に 無意識下でなされたことであったが、今は少しその意味合いが違ってきていることに、 ダンテ自身も気付いてはいなかった。

良いぞ、とバージルがダンテの後頭部を鷲掴みにするようにして、言った。ダンテは自分でも 判る程に瞳を輝かせる。本当にと問いたいところだが、口いっぱいにバージルのそれを含んで いるので不可能に近い。んく、と唾液を飲み込むと、ダンテの後頭部を掴むバージルの手に にわかに力がこもった。

「出すぞ。余さず総て飲め」

バージルが言う。その意味も判らぬうちにバージルのものがびくんと脈動し、口内(ほとんど 喉だ)に何かが勢いよく注ぎ込まれてダンテは思わず顔を背けようとした。が、バージルの手が それを赦さない。ダンテは涙目になりながら、口内に放たれたものを飲み下すしかなかった。 ひどくにがい。ごくりと嚥下したのを確認するように、バージルがダンテの髪を掴み後ろへ 引いたので、自然顔を上げるかたちとなる。

「ッあ、はぁ……はぁ……っ」

ようようバージルのそれを手放したダンテは、荒い息をし(時折咳き込み)つつバージルを 見上げた。ぴっと顔に何か雨粒のようなものがかかった気がしたが、確かめる余裕はない。 息が苦しかった。
無意識に唇を舐める。どろりとしたものが舌に絡み、やはり苦味が広がった。それを見下ろして いたバージルが、不意にダンテの脇の下に手を差し込み、ひょいとあぐらを掻いた膝の上に 抱き上げた。

「んっ……ばぁじる?」

どうしたのか、問おうとした唇をバージルのそれで塞がれる。まだ息の調っていなかった ダンテは、すぐに苦しくなって眉をしかめた。しかしバージルの巧みな舌に口蓋をなぞられると、 条件反射で躰が跳ねる。舌の付け根を舐ぶられると、そうするつもりがなくとも腰が震える。

「っん、くぅん……」

鼻にかかった吐息がもれる頃には、ダンテはバージルの首に腕を回し、自らキスをねだって舌を 搦めていた。バージルが笑みを浮かべているのが、何となく判る。けれどもバージルはダンテを 叱ったりしないので、ダンテはひたすらキスに夢中になった。
無防備な尻にバージルの手が伸びても、ダンテはぴくりと背中を震わせただけで抵抗など しなかった。バージルのキスは巧みにすぎて、ダンテの思考などあっという間にとろとろに 蕩けてしまう。だからバージルの指が粘膜に押し入っても、ダンテはバージルにしがみついた まま――――熱心に、キスに酔い痴れていた。

「んふ、ん、んっ」

背中のほうから、くちくちという粘っこい音が耳に届く。ぞくぞくと背中が震え、いっそう思考が 蕩けていく。何も考えられず、バージルにしがみつくことしか出来なくなっているダンテの、朱に 染まった耳を低い声音が撫ぜた。

「挿入るが、暴れるな」

腰に響くような声は、ダンテの一等好きなものだ。思考などろくに働いていないダンテは、 むにゃむにゃ寝言を言うように、キスをしながらバージルに応じた。無論、バージルの言葉の 意味など欠片も判ってはいない。
溶けていた思考が僅かながらにも修復されたのは、バージルのものが、ダンテの尻の奥まった ところに深く侵入を果たしたときだった。

「ひぁうッ……!?」

バージルの首に絡めていた腕を、バージルの胸を突っ張るそれへ急いで変える。しかし、

「暴れるなと言ったのが聞こえなかったか?」

氷のような碧眼に真正面から射抜かれて、ダンテはひっと引きつった悲鳴を上げた。バージルには 逆らってはならない。判っているのだ、そんなことは。けれど、ダンテには何ものからも守らねば ならぬものがある。

「だ、って、」

潰れてしまう、とダンテは泣きそうになりながらも訴えた。バージルの怒りはこわい。けれども こわいからという理由で、赤ん坊を犠牲には出来ないししたくなかった。
バージルの眉間に深い皺が寄る。機嫌が下降したことは明らかで、忌々しげにダンテの腕を片手で 一纏めにしてしまった。

「バージル、やだ……っ」

喘ぐように言えば、バージルは片目を眇めて空いた手でダンテの腹を押すようにした。

「黙れ。――――俺の子ならば、この程度のことで潰れるようなひ弱ではあるまい」

思いがけぬ言葉に、ダンテは大きな瞳をぱちぱちと瞬かせた。

「ほ、んと?」

食い入るようにバージルを見つめ、問う。バージルのダンテの腹にあてられていた手が、今度は 頬に触れてくる。その指先は冷たいが、あたたかいとダンテは思った。

「俺の言葉が信じられぬか?」

ダンテはすぐに首を左右に振った。バージルのことは盲目的に信じているダンテである。疑うなど、 想像ですらしたことがない。
バージルは当然のように頷いた。

「ならば、続けるぞ」

バージルはダンテの唇に触れるだけのキスを落とし、ダンテの腰を掴みそれを上下させた。

「ひんッ……ぁ、あっ!」

じゅぷっと激しい水音をさせて、ダンテの内深くをバージルが突き上げる。何度も繰り返される この衝撃にも、ダンテのおなかにいる赤ん坊は無事だとバージルは言う。だから、きっとそう なのだろうとダンテは思う。
とはいえ、すぐにも“せっくす”に溺れられるかと言えば、そう簡単にもいかぬのだけれども。





続けて二度、バージルが少年の内へ精を叩き付けたときには、彼は既に気を失ってしまっていた。 一度目の際にはまだわだかまりを残していたように思われたが、それも束の間のこと、バージルが 二度放つ間に、少年は何度射精したか知れない。
彼はもはや、赤ん坊が潰れると言って行為を拒むことはなくなった。それを進歩とは言わぬ だろうが、バージルの面倒が一つ減ったことには違いない。

くたりと寄り掛かってくる痩身を、バージルは抱き抱えて風呂へ入れてやった。隅々まで丹念に 清めてやる間、彼が目を覚ますことは一度もなかった。
少年は意識を取り戻すことのないまま、朝を迎えた。







起き抜けに、陽の光は少々眩しすぎる。ダンテはしょぼしょぼする瞳を閉じ、枕にぎゅっと顔を おしつけた。と、頭上からくすりと笑みが降り注いだ。低いそれは、寝起きの頭でもバージルの それだと認識出来る。ダンテはそろそろと顔を起こした。

「眩しいか?」

穏やかな声音に、ダンテは少し考えてから首を振った。だいじょうぶ、と告げる声がかすれている ように思ったが、気の所為だろう。

「おはよ、ばぁじる」

ふんわり微笑むダンテの頬に、バージルの掌が触れる。おはよう、とゆったりした声が返って きて、ダンテはもっと仕合わせになる。枕だと思っていたものは、どうやらバージルの 大腿であるらしい。

バージルはダンテの頬や額を撫でながら、ミルクでも飲むかと問うてくれた。ダンテはバージルの 手に自身の手を重ね、うん、と笑顔いっぱいに頷いた。

「待っていろ。すぐに用意してやる」

バージルはダンテを優しく抱き起こし、ソファーから立ち上がった。いつもそうしてくれる ように、今日もバージルが起き出すのと一緒に、ダンテをリビングへ運んでくれていたのだ。
少しの間、離れることすら寂しく感じながら、ダンテは冷蔵庫へ向かうバージルの背を見つめ、 まったくの無意識に腹を撫でさすった。と、不意に。

「っ……」

胸が苦しくなって、ダンテはソファーに突っ伏すように倒れ込んだ。声など上げていなかったの だが、気配で気付いたらしいバージルが、どうした、と慌ただしく駆け寄ってくる。

「ダンテ?」

顔を覗き込んでくるバージルが、ぼやけて見える。涙が滲んでいるからだと、ダンテはすぐには 気付かなかった。

「ぁ……っう……!」

バージルの名を呼ばわろうとしたが、叶わずダンテは小さく呻いた。訝しげなバージルを押し 退け、ソファーから転がり落ちる勢いでキッチン――――シンクへ駆け込んだ。そして、躰を 折り曲げ喉の奥からせり上がってくるものを吐き出した。

「っえ……うぇ……ッ」

嗚咽をもらし、同時に涙がこぼれ落ちた。苦しい。気持ちが悪い。咳き込むと、背中に何かが 触れ撫ぜてくれる。バージルの手だと、しばらくしてようやく認識した。
バージルによって蛇口が捻られ、水が流れ落ちる。水をすくった手が口許に運ばれて、ダンテは 一心にそれを舐めた。冷たくて、ほっとする。どうにか吐き気は治まったらしい。

「はぁ……ふ……」

安堵のため息を吐いたダンテの耳に、バージルは何故だか悄然とした呟きが滑り込んでくる。

「ダンテ、お前は……」

手の甲で唇を拭い、振り仰いだそこには奇妙な(困ったような?)表情をしたバージルがいて。

「……ばぁじる?」

ダンテはことりと首を傾げた。
























前?
戻。


だんだん主旨がわからなくなってきてます…どうしましょう(汗)

[08/06/14]