宵醒ヨイニメザメ









「…………」

ふと、何かがベッドに潜り込む気配で目が覚めた。何か、など確かめるまでもないのだが。

「んん……あったけぇ……」

仕合わせそうに呟き、すり寄って来るそれに、バージルは内心で肩を竦めた。お前は暖かい だろうが、こちらは寒い――――というよりは冷たい――――ばかりだ。
既に半分眠っているそれの躰をぐいと引き寄せ、仰向けにしてその上に覆いかぶさる。 重かろうが何であろうが構うことではない。それの首筋に顔を埋め、目を閉じる。己と全く同じ 姿形と知ってはいるが、こうして抱き込んだ時に感じるそれの容姿は、随分と 可愛らしいものだ。

幼い頃を思い出すからかもしれない。

「ん……ぅん……」

寝言か、吐息か。組み敷いたそれが息をもらした。バージルの息がうなじをくすぐっている からだろう。だからといって、バージルは顔の位置をずらそうとはしないが。
ダンテの躰が少しずつ暖まってきた。常に体温の低めなバージルは、あまり寒さに強くない。 それに比べてこの眠る子供――――バージルにとってはいつまでも子供に見える――――は体温が 高く、冷え込んだ夜などは抱き締めていると毛布代わりになるのだ。
蛇足だが、バージルが冬を得意としないのとは逆に、この子供は夏に極端に弱い。

正反対の双子。

そう、よく言われた。
まさに然りとバージルは思う。自分とこれとは似ても似つかない。だからこそ、互いが必要 なのだ。

見目も中身も全く同一の人間など要らない。正反対だからこそ、求めずにはおれぬのだ。
もっとも、これも同じように思っているかは判らないが。

バージルは間近にある弟のうなじに、ゆるく噛み付いた。柔い膚を唇や舌でなぞるのも悪く ないが、犬歯を立てて噛んでやりたい気分だった。しかしぷつりと血の滲む程には歯を立てず、 甘噛みをするだけにとどめておく。
痛みはないだろうが、濡れた感触にそれが尻をもぞりとさせた。

「……んん……」

もれる吐息に嫌がるふうはない。当然だ、とバージルは思う。バージルがそれの膚に噛み付く ことは珍しくなく、時にはわざと膚を破り、血を舐めることもある。そしていずれの時にも、 これが抗ったことなどない。むしろどこか恍惚として、バージルにもっとと言ってねだりすら するのだから。
すきもの、だとはバージルは思わない。自身をしても、そうだ。
血への衝動は弟にのみ向けるものであり、それはこれも判っているのだとバージルは気付いて いる。だから、抗わない。もし嫌だと言うことがあれば、その時は鎖で縛り付けて閉じ込めて やろう。――――そう出来るならば。

(今すぐにでもしてやるというのに)

膚の弾力を楽しむように、ゆるく立てていた犬歯を無意識に膚に突き刺していた。ぶつ、と やけに大きな音が響き、それがびくっと躰を痙攣させてバージルははっとした。
口内に広がる赤は、それでも甘く。
破れてしまったそこに唾液をすり込むよう、傷を舐める舌先に感じる甘美な紅。

やめられない。そう、思う。

舐めつつ、また一つぶつりと噛んだ。それがびくんと躰を震わせる。

「っ……ん……ふ……」

どこか熱っぽい吐息に、そのつもりではなかったというのに下肢に熱が集まり始める。血の 衝動が性慾に繋がることは少なくない。
バージルはするりと弟の大腿に手を滑らせた。寝着の上からでも判る、引き締まった筋肉の 感触。これがしなやかに自分の腰に絡み付き、淫らに腰を揺らす。朱に染まった白い膚を白濁で 汚し、赤く熟れた蕾を熱い肉で貫き犯して、しかし充足は得られない。
抱き尽くしても、足りぬのだ。

(たちの悪い……)

くつりと笑い、バージルはそれの下衣を片手でずり下げた。体躯に恥じぬ程度の陰芯に指を絡め、 形を確かめるようになぞってやる。本人の意思とは関係なく鎌首をもたげ始めるさまは、目視は 出来ぬけれどさぞかし淫らなのだと判る。
快楽を好むこの弟の躰は、少し弄ってやっただけでも既にこれだ。

たとえ相手が誰であろうとも、同じなのだろう。

それは諦めを込めた確信。

操を立てろとは、言うつもりはない。ただ、自分以外の男――――無論女もだが――――の 匂いをまとわせていることは、赦せない。

「お前は俺のものだ」

肉体はもちろん、その精神の切れ端も総て。

ゆるゆるとした手の動きを、少し早める。次第に荒く変わっていくそれの息遣いが、早くと ねだっているように感じて、バージルは性急にそれの後孔をまさぐった。陰芯の先端から こぼれた先走りを塗り込み、中指で襞をめくるようにして内を探る。
びく、とそれの腰が跳ねた。

「ひぁっ……!」

内壁を掻かれ、さすがに覚醒したのだろう。震える睫毛に唇で触れると、薄く瞼が持ち 上がった。

「ぅん……、……?」

揺れる瞳がバージルとぼんやりと捉え、焦点を合わせていく。バージルはそれの額に口付けて、 前髪を掻き上げてやった。

「眠っていて構わんぞ」

囁けば、それはうつらうつらと瞼を瞬かせ、かくんと頭を枕に預けた。眠ったのかと 思いきや、

「……ぁジル……」

名を呼ばれた。

「何だ」

やめろ、とは言うまい。バージルはそれのこめかみに口付け、髪を撫で付けるように梳いてやる。 そうされるのが、これは好きだと知っているから。

「バ……ジル……、もっと……」

して。うっとりとした声に、バージルは笑みを浮かべた。

「してやるから、眠れ」

これから貫こうとしているというのに、どうして眠れなどと言えるのか。しかしバージルは 至って真剣だ。

夜明けまであと二時間もない。予想外に仕事の時間が押したのか、それとも仕事の後に何かが あったのか。どちらにせよ、これは今強烈な睡魔に襲われていることは確かだ。
眠らせてやろう。ただし、こちらはこちらで好きにするだけだ。

「んん……」

いくつも口付けをしてやれば、それは気持ち良さそうにうっとりとして。すうすうと呼吸が 落ち着くまでに、さしたる時間は要さなかった。

「眠れ」

俺の腕の中で。

バージルはそれの唇を軽く甘噛みし、噛んだそこを舌でなぞった。

たとえばこれが、幻であるならば。
どんなにひどくこわしても、元通りに戻せるだろうに。

他愛のないを考えて、バージルは自身を嗤った。

総てを浅ましいばかりの慾望に任せ、バージルは全くの無防備に弛緩したからだを蹂躙した。 柔らかな窄まりは、しかし男をきつく締め付け襞を絡み付かせる。それの意識は、ないままに。









離れないと誓えるならば。



離さないと言えたならば。









あぁ、

どうしてこんなにも。











夜が、長い。



















戻。



兄視点を板に付けたい、と思ったのかどうなのか。
何にしろ、むつかしい…とりあえずこれ書いてて思ったことがあります。
眠るダンテを兄といちゃこらさせるのが好き。以上。