朝戯アサノタワムレ











ぎざぎざの鋸のような形状をした刃を持つ、朱と碧の双剣。テメンニグルにてダンテに立ち はだかり、敗れて後はダンテを主として付き従う。
名は、朱をアグニ、碧をルドラ。それぞれ炎と風を操る意志ある魔剣だ。

強い者に使役されることを至上の願いとし、ダンテに平伏した彼らだが、現在は本来の姿で ある剣には必要最低限でしか戻っていない。ならばどんな姿でいるのかと言えば……










朝。アグニとルドラは夜明けと共に行動を開始する。二階廊下の突き当たり、狭い物置部屋が 彼らの城だ。といっても、彼らがその城にいるのは、一日のうちほんの数時間程度でしか ないが。

段ボール箱に敷き詰められたクッションと、膝掛け用毛布のふかふかのベッド。アグニと ルドラはもそもそと這い出し、揃って伸びをした。

「良い朝であるな」

「然り、良い朝よ」

しわがれた声を出したのは、剣ではなく小さな小さなぬいぐるみ。アグニとルドラは普段、 小鬼らしきぬいぐるみの姿で活動しているのだ。

よちよちと、着替えの必要のない彼らは起きたままの恰好で廊下に出た。物置部屋は、彼らでも 楽々に開け閉め出来るノブのないアコーディオンタイプのドアだ。
ぱたり、と行儀良くドアを締め、アグニとルドラは一列縦隊で廊下を行く。目指すは、もちろん 愛する主の部屋。しかしアグニとルドラには、主の部屋のドアは自力で開けるのは難しい。主は 昼まで起きず、ぺそぺそとドアを叩いたとて開けては貰えない。

どうするか。

ここに、彼らが早朝に起き出す理由がある。

ぺそり……

静かに、息を潜め気配を絶ち、ドアの間近の壁に張り付き待つこと数分。
かちりとノブを捻る音。来た。アグニとルドラは目配せし合う。

がちゃ、とドアが開いた。中から姿を現わしたのは、見ずとも判る。主の兄。寝汚い主と違い、 主の兄は無意味な程朝早くに目覚めるのだ。

アグニとルドラは兄に悟られないよう足許をすり抜け、まんまと主の部屋に滑り込むことに 成功した。目論見通りだ。部屋の壁にまたしても張り付き、ドアが閉まるのを確認。主の兄の 足音が遠ざかるのを聞き届けた後、彼らは嬉々として主のベッドに駆け寄った。

ぺそぺそよちよちもそもそ。

ベッドによじ登るのも彼らには一苦労なのだが、そこに主がいるのだと思えば、この程度は 何ほどもない。
もそもそ、もそもそ。広いベッド。毛布が一部だけ盛り上がったそこに、主がいる。アグニと ルドラのテンションは上がる一方だ。

主は今、少年の姿をしている。悪魔の毒によって躰が縮んでしまったのだ。しなやかな、 発展途上の躰からは危うい色気が匂いたち。それが判るからこそ、主の兄は主を一日のほとんど 独占している。それが、彼らには不満なのだ。

辿り着いた枕許で、アグニとルドラはほうと溜息を吐いた。毛布を手繰り寄せ、仕合わせそうに 眠る主のなんと可愛らしいことか。身の内に何やらうずうずとしたものが沸き上がり、二体は もふっと毛布に頭から飛び込んだ。

もふ、もふ、もふ。

ほふく前進の要領で、進む。アグニは主の腹の辺りに。ルドラは腰の辺りにそれぞれ移動し、 おもむろに。

主の躰を包む寝着の中に潜り込んだ。

ぴくん、と主の躰が身じろいだが、起きてはいない。朝方の主が泥のように眠っていることを、 彼らはよく知っている。
アグニは腹から胸へ。ルドラは腰から太腿へ。

這う、その動きは随分と妖しい。

膚を撫ぜ、探る手付きは交合における愛撫そのもの。
暖かな体温を確かめるように。幼さの残る躰から官能を引き出すように。

アグニは胸まで這い上がり、そこで小さな胸の飾りに目を付けた。
ルドラは太腿にとどまり、脚の付け根にある幼茎に狙いを定めた。
それぞれが、それぞれの獲物を得た。

「……んん……」

眠りの淵を漂う主が、悩ましげな声を漏らす。アグニとルドラは水を得た魚のように、主の 寝着の中で好き放題暴れまくる。尤も、動き自体は激しいものではないが。

撫でる。掻く。擦る。

出来得る限りを、懸命に尽くす。堪らないのは、当然そうされている主である。

「ん……ふぅ……」

不埒な小鬼に躰を弄られ、眠りは徐々に覚醒へと向かっていた。毛布の下、主の寝着の中に いるアグニとルドラは、主の覚醒が近いことなど気付きもせず、ひたすらに悪戯を続ける。

そして。

「んぅ……、……あ……?」

主の目が、ぱかりと開いた。まだ眠気の残る蒼眼がくくっと下を見下ろし、じっと見つめること 五秒。がば、と毛布を剥いだ。そこには、明らかに異質の何かがいると判る、山が二つ。

「っな……!?」

その段になっても、アグニとルドラは気付かない。一心に、膚を、胸を、幼茎を弄る。 一つ気付いたことは、主の珠の膚にざわりと鳥肌が立ったこと。む、と軽く顔を上げた瞬間。

「……っに、やってんだお前らァああ!」

主の絶叫で、今朝の戯れは終わりを告げた。異常事態を察した主の兄が、凄まじい形相で主の 部屋に駆け込むなり、閻魔刀でアグニとルドラを主から引き剥がしたからだ。

斬り裂かれた主の寝着の切れ端にくるまり、アグニとルドラはこの朝最後の喜びを噛み 締めるのだった……。


















戻。


アグルド、微妙に勝利。