執淫シュウイン











夢か現か。
現か、夢か。

膚を這う、指と舌。
口に溢れる、苦い白濁。
後孔を犯す、巨大な杭。

一度か、二度か。
二度か、三度か。

人ではないものの精を、どれだけ飲まされただろう。それも、二体分。
一方が後ろを犯せば、もう一方は口を。果てればこちらが体勢を変えさせられ、また 犯される。
それの、繰り返し。

意識はあったか。
判らない。

気付けば何ごともなかったかのようにベッドで寝ていて、帰宅したバージルが抱き締めて くれた。だから、夢、なのだと思う。

夢、だと、思いたい。

あんな夢は、忘れてしまった方が良いのだ。
けれど、――――膚に覚えこまされた記憶程、消えないものは、ない。













「バージル、」

夜明けとともに起き、ベッドを降りようとするバージルを、ダンテは呼び止めた。バージルの シャツの裾を摘む手は、比喩ではなく小さい。

悪魔の毒による作用で躰が縮んだのは、もうひと月も前のこと。躰はいっこうに戻る気配がなく、 ダンテに軽く絶望を抱かせていた。しかしダンテが最も哀しいのは、双子の兄ですらこの状況を 楽しんでいることだ。
バージルの機嫌は、ああ見えて上下が激しい。下降した時は誰にでも判るが、上昇時の変化は ダンテにしか見分けがつかない。ダンテの躰が縮んでからは、上昇することが激しく増えた。 例えば、バージルの趣味である日本のものを、ダンテに身に着けさせる時。

着物という、ダンテからすれば女性の纏うワンピースと似た服を、バージルはダンテに好んで 着せる。嬉々として、と言った方がしっくり来るかもしれない。本当に楽しそうなのだ。着物を 選ぶ横顔と言い、着付ける仕種と言い。
だから、バージルはダンテの憂いなど汲んではくれない。それがダンテをいっそう哀しく させるのだとは、バージルは知らない。

ぎゅっとシャツを掴むと、バージルは肩を竦めてダンテを抱き起こした。そのまま抱っこする ように抱き上げられ、ようやくダンテは小さな安堵を手に入れる。

「起きるのか?」

問う声は、優しい。ダンテがここ数日、バージルがいなければ不安で仕方がないことを知って いるのだ。
髪を梳く指すら優しくて、ダンテは猫がするようにバージルの肩口に頬をすり寄せた。

「ん……バージルが起きるんなら、」

起きる、ではなく、寝ていたくない。しかしそこまでは口には出さず、バージルのシャツを きゅっと握り締めた。聡いバージルには、皆まで言わずとも伝わることの方が多い。
バージルはダンテの背中をゆるく撫でさすり、

「一度下ろすぞ」

と断ってダンテをベッドに座らせた。着替える為だと判っているし、自分も着替えねばならない ことは判っている。しかし、何故か胸が苦しい。寂しいからだと、嫌でも自覚してしまう。

「バージル……」

兄を呼ぶ声は、自分でも嫌になるくらいか細くて。捨てられて痩せ細った猫のようだった。
バージルがシャツを脱ぎ、均等の取れた彫像のような躰をさらしたまま、ダンテを見やって 小さく笑う。

「もう少し待っていろ」

バージルにはダンテの寂寥などお見通しで、それがどこから来るものなのかも、おそらく 気付いている。あの夢か現実か判らぬ出来事のことは、一度も話したことはないし、間違っても 話せないけれども。

ダンテは、場合によってはとことん自分を甘やかしてくれるバージルに、甘えた。そう したい――――しなければ堪えられそうにない――――という衝動に似たものではあるけれど。

甘えて、縋って。

苦笑一つで総て受け入れて、髪を梳いて、キスをしてくれる兄が好きだ。
きっと、今が普通の精神状態ではないからなのだろう。こんなにも、兄の体温が恋しくて 仕様がないのは。

着替えの済んだバージルが、ダンテの寝着――――ぶかぶかの半袖シャツと膝丈の綿の パンツ――――を脱がしにかかる。
少し前まではここで着物を着付けられたのだが、最近はダンテが駄々をこねた結果、兄はラフな 部屋着を買ってくれた。ズボンはどれも膝丈、というのが少し気になるところだが、あえて追及は しない。嫌な答えが返って来そうで、訊くに訊けないのだ。

下着一枚になった自分の躰を見下ろし、ダンテは無意識に溜息を吐いた。薄い胸板、細い手足。 十四、五の頃はこんなにも細かったのかと思うと、溜息も出るというものだ。
この非力なばかりの躰の所為で、あの暴虐を受け入れるしかなかったのかと思うと、自分自身に 怒りが沸いてくる。

ダンテの中で、あれが夢だとは割り切れなくなっていることに、ダンテは気付いていない。

「ダンテ、」

不意に兄の声が耳に吹き込まれ、ダンテはぎくっと肩を跳ねさせた。視界いっぱいに、 バージルが映る。それがダンテを安心させるのだと、バージルは知っているだろうか。

「ばーじる、」

舌っ足らずな声が情慾にけぶっていようとは、ダンテは気付かない。バージルがついと目を 細める。

幼い瞳を潤ませ、頬をうっすらと朱に染め、かぶりのシャツだけを身に着けて上目遣いに兄を見 つめる少年は、酷く艶めいて男の目に映る。無論ダンテには自覚の欠片もないことで、それ故に 始末の悪い代物だった。
あまり即物的なところのないバージルが、微かに喉を上下させる。ダンテはやはり、気付か ない。少し躰を引いたバージルに、ダンテは咄嗟に腕を伸ばした。

「バージルっ」

小さく叫び、バージルの首にしがみ付く。離れるバージルの体温が、兄に捨てられることを 連想させたのだ。

今バージルに離れられてしまったら、自分はどうなるか判らない。
そんな根拠のない恐怖が、ある。

バージルに触れた場所から、全身に安堵が広がる。それは酷く仕合わせな心地で。
甘える、という範囲を逸脱したダンテの行動に、バージルはさすがに不審を感じたのだろう。

「どうした」

そう問う声には珍しく困惑があった。ダンテはしかし、それを揶揄することなどなく、 バージルの体温をより感じようとして、ぴたりとバージルにくっついた。
シャツは着ていても、脚は剥き出しのまま。ぽつりぽつりと名を呼ぶ声は甘やか。すり寄る躰は 細く、柔らかい。そんな状況で、男を煽らぬと思う方がどうかしている。

「っや……」

ダンテは小さな悲鳴を上げた。バージルの指先が、大腿をかすめるようになぞったのだ。見目は 少年の姿をしていても、躰は男に与えられる快楽をはっきりと覚えている。脇腹や臍をなぞる 悪戯な指先に、感じるものはくすぐったさではなく明らかな快感だ。

「んっ、ん、っあ……」

紅い口唇から漏れる声は、れっきとした喘ぎ。変声期前の高めの声が女の喘ぎを思わせて、 ダンテは羞恥に顔を真っ赤にさせた。
いつか見た、安いアダルトビデオの女優を思い出してしまう。はしたない、色気よりも淫らさが 勝る声。

強張り、固まってしまったダンテの頬に、バージルが慰撫するようにキスをした。下着の上から 性器をくすぐられ、躰が軽く跳ねる。

「ひゃあんっ」

ぎゅうっとバージルのシャツを両手で握り締め、そこに顔を埋める。
バージルの手はゆるゆるとダンテを責め、緩やかなのだが止まることを知らない。緩慢な愛撫は、 しかし確実にダンテを追い詰めた。

「ひんっ……やぁ……」

抑えようとしても、声は喉を押し上げて溢れてくる。震えるダンテに、バージルが囁いた。

「堪えるな」

言うなり、布に隠れたままの性器の先端を掻かれ、ダンテは「ひっ」と短く啼いた。はしたなく、 下着に染みが出来るのが判る。それが更にダンテを苦しくさせた。

「やだっ……や……ばぁ、じるぅ……」

懇願は、ただバージルを煽るだけだ。

「濡れているな、ダンテ?」

揶揄する声は愉しげで、珍しくバージルも昂奮していると知れる。しかし今のダンテにはそれと 気付くことは出来なかった。

バージルの愛撫は、気持ちが悦い。けれど、身悶えする程快楽に溺れていく自分を、バージルは どう思っているのだろうか。
はしたなく乱れる、淫乱を、バージルは。

不意にひやりとして、ダンテははっとした。いつの間にか、床にへたりこんでしまったらしい。 剥き出しの足に、床の冷たさが染み渡る。じわり、と触れたそこから体温が伝わり、床が 生暖かさを持ち始めた。脚の間のものは、熱い。

「ひ、っう、ぅ……」

もどかしい。バージルの手を離れた性器は、布のこちらで涙を流す。それがバージルには手に 取るように判るのか、ダンテの脚の間に片膝をついた。

「つらいか、ダンテ?」

欲しいと言ってみせろ、とバージルは強要する。しながら、ダンテの腰を浮かせ、自分の大腿に 座らせた。
何をするのかと、ダンテは惚けたようにバージルを見上げる。途端、小さく脚を揺すられた。

「っひ、や……っ!」

振動が直接腰に伝わり、ダンテは自分を揺するバージルの脚に手をついた。動きを止めようと してのことだが、しかし前傾姿勢になることで、性器を擦り付ける形になってしまう。
布一枚を隔てて響く、小刻みの振動。

「ひゃんっ、あっ、あっ……」

自ら快楽を求めて腰をすり付ける。バージルの目には、そう映ったことだろう。

「悦い声だ」

うっそりとした呟きに、ダンテはぎくりとして躰を起こそうとした。けれども、 出来なかった。

気持ちが、悦い。

沸き上がる快楽が、ダンテを縛る。

「あぁっ……」

バージルの手に触れられているわけでもなく、ダンテは揺すられるままに射精した。 どくりどくりと波打つ躰を、バージルの脚にしがみつくことで抑える。
恥ずかしく濡れた下着が、膚に張り付いて気持ちが悪い。けれど射精の解放感がそれに勝り、 ダンテは熱っぽい息を吐いた。

「……はぁ、ん……」

一部始終を、バージルの目にさらした。それがまた、ダンテを昂揚させたのだと、ダンテ自身は 判っていない。

「ダンテ、」

バージルに名を呼ばれて、ダンテは反射的に顔を上げた。

「おいで」

まるで本当に子供にするように言われ、しかしダンテは疑問も持たず、伸ばされたバージルの 腕を拒むこともない。
脇に差し込まれた腕が、軽々とダンテを立ち上がらせた。しかしダンテの脚は震え、自力で 立つことなど出来そうもない。それはバージルにも判っているのだろう。立て、とは言わない。 黙ってベッドに座らされた。

「腰を上げろ」

命令口調はいつもの通り。ダンテは命じられるまま、ベッドに腕を突っ張って腰を浮かせた。 ずる、とぐっしょりと濡れた下着を脱がされる。水では有り得ない粘質の液体にまみれた布を、 バージルは衒いもなく床に放った。

「溜まっていたのか?」

予想以上に濡れていたのだろう。バージルはくすりと笑った。

「躰は縮んでも、溜まるものなのだな」

子供のくせに、と言外に揶揄され、ダンテは全身を紅潮させた。白磁の膚が赤に染まるさまは、 自覚がないからこそ一層なまめかしい。

「そう、誘うな」

少しも困ったふうはなく、バージルがダンテの胸を弄りながら囁いた。そんなつもりのない ダンテは、弾かれたように目を見開く。

「さ、そって、なんかっ……」

こり、と尖りを爪で転がされ、バージルを睨むことも出来ずに小さく啼く。

「あんっ……」

開放されたばかりの性器が、また硬くなり始めている。本人よりも先にそのことに気付いた バージルが、指先でダンテの中心を根元から先端にかけてなぞった。
堪らないのはダンテだ。

「っ! あっ……」

ぞくぞく、と背筋を駈け登る快感に、ダンテは首をのけ反らせた。白い喉がバージルの眼前に さらされる。
バージルは何を思ってか、ダンテの喉に吸い付いた。かり、と歯を立て、紅くなったそこに舌が 這う。

「っん……」

首は、駄目だ。どこもかしこも弱いところばかりだが、首は快感とはまた別の意味で弱い のだ。
ぞくぞくする。バージルがしているのだと思うと、一層。

それはバージルが判ってやっていることなのか、ダンテには判らない。どちらでも、結局同じ ことだ。

「んん……ばぁじる……」

首を、胸を、性器を。バージルの指と舌に愛撫されて、ダンテはある種貫かれるよりも強い 快楽を覚えた。これで後ろを突き上げられたら、どうなってしまうのだろう。冗談ではなく、 死んでしまうかもしれない。思い、けれどそれでも良いとも思う。ただ、バージルはどうか。

いやらしく、浅ましく、快楽を貪る自分は、バージルの目にはどう映っているのだろう。
快楽にけぶった頭で、ダンテは必死になった。

だって、自分は。

バージル以外の誰に犯されても喘いでしまう。快楽に溺れ、悦び、射精して。そう、相手は 誰でも構わないのだ。この淫乱な躰は。それこそ生き物とは言えない、綿の詰まっただけの動く 人形でも。

「やぁ……」

バージルの長い指が後孔をさぐり、ダンテは拒もうとした声を飲み込んだ。

「ここは期待しているようだが、何が“嫌”だ?」

触られずともひくついていた蕾を指の腹でなぞられ、ダンテはびくりと腰を浮かせた。それは 行為を促しているように見えるのだとは、追い詰められたダンテが気付く筈もない。
襞をくすぐる指が、つぷりと中に侵入した。すり切れるような乾いた痛みに、ダンテは高く 啼いた。

「いあぁっ! や……ばぁじる、いた、い……っ」

目尻に涙を溜めて訴えるが、バージルはふっと笑う。

「痛いくらいが悦いのだろう、お前は」

ぬぷりと第二関節まで入り込んだ指で、内壁を掻かれる。我知らず躰が痙攣した。しかし それは快楽によるものばかりではない。
バージルの、言葉が。

――――痛いくらいが、いいのだろう。

バージルではない、人ですらないものに、同じ言葉で辱められた。
かさついた声と乱暴な愛撫、後孔にあてがわれた灼熱の凶器をまざまざと思い出して、ダンテは 目を見開いた。ひゅ、と気管を空気が通る音がする。
しかし、息は。
止まって、いる。

ぱし、と軽い音がした。虚空を見つめていた瞳をくるりと動かすと、バージルの碧眼と かち合った。

「ダンテ、」

名を呼ばれて、バージルに頬を叩かれたのだと気付く。しかし痛みが襲って来ないのは、 バージルが限り無く手加減をしたからなのだろう。

「……ば、じる……」

呼ばわると、バージルはダンテの額を撫で、前髪を掻き上げキスをした。労るようなキスは、 バージルが総て察しているように思えてならない、優しいもので。

「バージル、バージル……っ」

ダンテは自ら、唇へのキスをねだった。足りない。それは今まで感じたことのない類いの恐怖に 後押しされた衝動だった。
バージルは焦るなと低く囁き、ダンテの唇を塞ぐ。今のダンテには、快楽を伴った安堵が必要 なのだ。
それはダンテ自身、自覚してはいないけれども。

絡まる舌に翻弄され、ダンテは後孔をほぐす指が増えたことに気付いていない。初めに感じた 痛みはもう、消えている。

「んっ、ふぅっ……」

舌の裏を舐められると、ぞくりとする。陶然としているのが自分でも判るが、こうなって しまえば自分ではどうしようもなく。ただ、溺れるしかない。
何より、溺れたかった。

「何も考えるな」

バージルの言葉に、ダンテは薄く瞼を開け視線で頷く。

「ん……」

ちゅぷ、と後ろの蕾から、いつの間に増やしていたのか、指が三本引き抜かれる。ダンテは バージルの首に腕を絡めた。そっとベッドに組み敷かれ、脚を腹につく程折り曲げられる。
次に来るだろう衝動に、無意識に腰が逃げようとする。しかしそれも、バージルに「逃げるな」 と甘く抑えられてしまえばそれまでのこと。

「逃げるな。どうすれば良いか、判るな?」

ねだれ、とバージルは言っているのだ。ダンテは頭ではなく、躰で悟った。
しとどに濡れた腰を揺らめかせ、誘う言葉は稚拙なものしか紡げないけれど。

「バージル……欲しい……」

羞恥やプライドを捨てたわけではないけれど、今は本当にどうしようもなくて。早く、 バージルのものが欲しくて堪らない。
はしたなくねだるダンテに、バージルは笑みを見せる。

「良い子だ」

幼いと言える躰の、その秘孔にバージルの楔が穿たれる。ダンテの背が弓なりに反った。

「あぁあああっ!」

深く貫かれる、その衝動は激しく、しかし兄と繋がったそこから沸き上がるものは、紛れも ない安堵。そして快感。
バージルはダンテの内に自身を納めたまま、何故か動かない。ダンテは焦れて、バージルを きつく締め付けた。

「ばぁじるっ、はや、く」

それでも動こうとしないバージルに、ダンテは堪らず言った。

「っ……早く、はやく動いて……!」

ようやく、バージルが緩く腰を使う。待ち望んだ挿出は、けれど緩慢に過ぎて満足出来る ものではなくて。

「ばぁ、じる……意地悪……っ」

ぽろぽろと涙が零れる。いつもなら望まなくても激しく蹂躙されるというのに、そうして 欲しい時に、何故。
それは、バージルがダンテにいちいちねだらせたいからなのだと、嫌でも気付く。

「どうすれば良いんだ?」

などと、わざとらしく問うてくる兄を、ダンテは睨みつけた。残酷な支配者に縋るしかないと いう、矛盾。しかしそれでも、縋る他ないのだ。

「言え」

促す声に、ダンテの抵抗は脆くも崩れてしまい。

「もっと、して、」

「どう、して欲しいんだ?」

「……つよく、して、もっと……っ」

にぃ、と兄が空気のみで笑ったのが判った。瞬間、ダンテの思考は四散する。バージルが 本格的に挿出を開始したのだ。そうなれば、最早何を考えることも出来なくなる。しかしそれは、 切に望んでいたことで。

「っあ! ぁあんっ!」

漏れる声は悦びに震え。細い腰は淫らに揺れ。ぢゅくぢゅくといやらしい水音が耳を犯し、 部屋を淫靡に染め上げる。
息継ぎもままならない程揺さぶられ、ダンテはひたすらバージルにしがみついた。快楽と 安堵。二つを満たしてくれる、唯一の存在に。

「あっ、あ……ばぁじるぅ……っ!」

微かに前立腺を掠められ、ダンテは打ち震えた。しかしバージルはそれきり、違った箇所しか 突いてはくれない。

また、とダンテは顔を歪ませた。と言っても、醜さはない。今にも泣きそうな――――涙は 既に溢れた後だが――――顔で唇を噛むさまは、可愛らしい。それは勿論、ダンテ自身は無自覚の こと。

バージルがするりとダンテの陰茎に指を絡めた。びくん、とダンテの躰が跳ねる。

「あっ……!」

咄嗟に射精しかけるが、何故判ったのか、バージルが指で輪を作って阻止してしまう。

「や……バージルぅ……」

「今出してしまうのは、本意ではなかろう」

さぁ、どうして欲しいか言え。

絶対の王は、命じる。

逆らえない。逆らえる筈がない。

「ふ……奥、突いて……そこじゃ……やだぁ……っ」

欲しくて欲しくて堪らない。恥じらいも捨てて訴えるダンテの腰を、バージルが少し持ち 上げた。

「それで良い」

来る、と思った。ぐりっと予想に違わず前立腺を擦り上げられ、ダンテは啼いた。

「ひぁああぁっ! ばぁ、じ……イいッ……!」

きゅう、と締め付けるバージルのそれは、熱い。体温の低いバージルだが、これ程熱くなるの だと思うと、こちらも熱が高まってくる。
自分を犯しているから。それがたとえ独りよがりだとしても、そう思えば酷く嬉しくて。

「あんっ、あ……ぁ、じる……もう、だめ……っ!」

あまりにも快楽が強すぎて、頭がおかしくなりそうだ。揺さぶられる度に零れる涙を、 バージルが舌で拭う。

「良いだろう。達け」

赦しは、出た。性器を戒めていた指が緩められ……

「っ! ひッ、あ、あ……!」

どくりと溜め込まれたものが、弾けると同時に、内腑を熱い奔流が襲い、ダンテは声もなく 気を失った。










「ん……」

目を覚ませば、そこはベッドの上ではなく、リビングのソファー。
スプリングの感触の違いで判り、ダンテはどうしてか考えながら目許を擦った。と、その手を 誰かに掴まれる。……誰か、など判り切ったことだ。

「擦ると腫れるぞ」

淡々とした声に、ほっとする。それで、兄が自分をここに移動させてくれたのだと、 気付く。
もし目覚めた時に独りきりだったなら、不安に震えていただろう。それ程に、ダンテの心は 弱りきっていた。

「ばーじる……」

腕を伸ばせば、何をねだらなくとも兄が抱き締めてくれる。
さらした痴態のことを思えば、頬だけでなく全身が赤くなる。しかし今のダンテには、 恥よりも強い不安があった。

どんなに深く兄に抱かれても、消えない。だから、もっと触れて欲しい。触れていたい。

「来い。ココアでも作ってやる」

抱き上げてくれる腕は温かく、言葉はどこまでも優しい。

ダンテは頷くと、そのままバージルの肩口に顔を埋めた。


















戻。


表に置いた、アグルド×ダンテ後日談の別話です。