羨望
ぱらぱらとページをめくり、一つ、大きな溜息を吐く。
「何でこんなもんが面白いんだかなぁ」
呆れてぼやきながら、挿絵の類もない分厚いばかりの本をぽんとソファーに放った。
狙ったわけでもなく本がクッションに当たり、軽くバウンドしてクッションの向こうに
はまる。
詰まらない。
口の中で呟き、また溜息を漏らした。
ソファーには座らず、床に腰を落としてソファーを背凭れにするという、いつもの形。
しかしいつもと違うのは、ソファーに座る人間がいないこと。
「まだかな……」
呟くと、途端に独りきりというこの現状が、やたら寂しいものに思えて来る。しかし
それすらどうでも良いと思える程に、待ち惚けにはもう飽き飽きしていた。
次は無理矢理でもついて行こう。
独りごちて、誰も座っていないソファーにぽてんと頭を預ける。
(本屋なんか、嫌いだけど)
瞼を閉じると、ごく自然に眠りに落ちた。
事務所兼自宅の玄関をくぐり、慣れた足取りで自室に向かう。手に提げた紙袋を部屋に
入ったところに置いておき、すぐに階下に戻った。
洗面所で手を洗い、不貞腐れているだろう人間を宥めにリビングに入る。が、予想していた
不満のこもった文句は投げられることはなく。訝しんだが、何故なのかはすぐに判った。
眠っている。
相変わらずソファーに座ることはしないらしい。枕にするようにソファーに凭れ、ひそりと
眠っているのだから何の文句も出る筈がない。
肩を竦め、眠りを妨げてやらぬよう、というわけではなく、いつものようにソファーに
腰掛けた。それでも、ぴくりでもなく眠っている。
「ふん……」
面白くない。
子供のような寝顔で気持ち良さそうに眠る姿に、そんなことを思う。
今朝も昼近くまで寝ていたくせに、何故まだ眠れるのだろうか。
待ちくたびれたか、それとも。
「不貞寝、だろうな」
確信を持ってそう判断し、眠る肩を軽く揺すった。
ソファーを枕にするくらいなら、俺にしておけ。
別にソファーなどに嫉妬はしないが、しかし何やら面白くなくて。
「ん……バージル……?」
もそりと瞼を重そうに持ち上げ、嬉しそうに笑う。おかえり。寝惚けているのがありありと
判る、舌っ足らずな語調。
「……ただいま」
答え、ソファーに上ろうとする躰を引き上げてやる。
嬉々として、首に腕が回され抱き付いて来た。確かめるように、匂いを嗅がれる。
「犬か、お前は」
くすりと笑い、ほっそりと引き締まった腰を抱き寄せた。こちらの腿を跨ぐ形で体重を預け、
また眠ってしまったそれの、銀糸の髪が頬をくすぐる。
本当に小さな子供のようだ。
また肩を竦め、瞼を閉じた。好きだと思う、ほのかに感じる匂いに誘われるように、
眠りに落ちていく。
次は、これも連れて行ってやろう。
一時間待たせただけで不貞腐れてしまう、この甘えたな寂しがりを。
(本屋など、詰まらないと言うだろうが)
総てを許しきって眠るそれを、起きぬ程度に抱き締めて。
気が付けば、いつの間にか眠っていた。
ソファーの端には、放り出された一冊の本。
だるっ!!とりあえず砂吐いときましょうか。
短いものを書こうと、バイトの行きしなで書いたものです。
1時間半あったわりには、やたら短くて申し訳ない;