書初カキゾメ











頭がぼうっとする。
ダンテはソファーの背凭れに寄り掛かろうと、後ろに躰を倒した。が、横合いから素早く腕が 伸びてきて、肩を掴まれ引き寄せられる。

「帯が崩れる」

という、少しばかり不機嫌な声はダンテの双子の兄のもので、ダンテを抱き寄せた腕もこの兄の ものだ。帯というのは、バージルがダンテに着付けたキモノという日本の服の一部で、腰に ぐるぐると巻き付けて後ろで結ぶ幅広のもののことである。ダンテが何故そんなものを着ている のかと言えば、原因はバージル以外には有り得ない。

とあることから躰が縮んで、早一年半。双子のクロゼットには子どもに合うサイズの服など ありはせず、下着から何から、いちいち調達せねばならなかった。その調達を一手に引き受けた のはバージルで、どこから手に入れてきたのか、キモノとやらをやけに気に入ってダンテに 着付け始めたのである。
以来、週の半分はキモノを着せられている。日本の標準的な服だとバージルは言ったが、ひどく 動きにくいわ着崩れるとやたら怒られるわで、ダンテのキモノに対する評価はあまり高くない。 キモノは嫌だと訴えに訴えた結果、バージルも半ば折れて普通の洋服を買ってくれるように なったのだ。ズボンは何故か総て膝の見えるハーフ丈というのが、少し気になるダンテでは あるが。
そんなわけで、今日もダンテはバージルによってキモノを着せられている。いつものキモノとは 少し違うらしく、袖がやけに長い。フリソデ、とバージルは言った。赤地に白と金で花が描かれ、 派手な飾り帯を帯とは別に付けられている。だからソファーに凭れようとしたのを、バージルが すんでのところで止めたのだ。着崩れに煩いのは、年が明けても変わらない。
しかしダンテは、バージルに叱られてもむっとすることもない。今、ダンテはひどく気分が 良いのだ。何故かといえば単純な話で、程よく酔って上機嫌だからである。

日本酒というものを、ダンテは今日初めて口にした。バージルがわざわざ元日の為に取り寄せた ものらしく、ダンテは初め、興味本意でちろりと舐めたのだが、それからどんどん杯が進んで、 大きな瓶の中身は半分程なくなっている。温めた酒など初めて飲んだが、これが思いの外 ダンテの口に合ったのだ。
酒には弱くないダンテであるが、初めて飲むものであるからか、酔いが回るのはいつもより 随分早かった。その傍ら、酒に強くないバージルは本当に舐める程度にしか飲んでおらず、 酔ったふうはまるでない。もっともダンテは酔っており、バージルの酔い具合など目に入って いないのだが。

「もうやめておくか?」

ダンテが手放さず持っている杯(チョコ、という名前らしい)を、バージルが取り上げようと する。それにはダンテもむっとして、バージルを上目遣いに睨んでチョコを差し出した。

「まだ大丈夫だって! ん、」

頬はぽうっと赤く、瞳は酒の作用で潤んでいる。着ているものは派手な振袖で、髪はきれいに 整え、化粧をすればたおやかな女にも見える。そんな見目で睨んだとしても、迫力は当然なく、 むしろ誘っているように思われても仕方がないというものだ。しかしダンテに自覚はなく、 バージルに凭れて心地好さが格段に上がったお蔭で、いっそう上機嫌になっている。すりりと ダンテに躰をすり寄せられたバージルが何を思うかなど、ダンテ以外の誰にでも想像がつこうと いうものだ。
バージルに酒を注いでもらい、ダンテはにこにこしながらくっと一気に飲み干した。胃が 温まると、全身が内側からほてるように熱くなる。もう何杯も空けているのだから、躰が 温まっているのは当然といえば当然である。

「はぁ……」

満足げなため息を吐いたダンテの、熱くなった頬をバージルの指が撫ぜた。バージルも酒を 飲んでいるというのに、体温は変わらず低いままなのか、指先がひやりとしてひどく快い。

「バージル、指冷てぇな」

目を細めて言うと、バージルが笑ったのが空気で判った。

「お前は随分熱いな」

その所為で冷たく感じるのだとでも言うようなバージルの言葉に、ダンテはむうっと唇を 尖らせる。

「酒呑んでんだから、熱くて当たり前らろ」

呂律が怪しくなっていることに、ダンテは気付いていない。バージルが冷たい指で、ダンテの 耳をちょっと摘んだ。

「ここも、熱い」

バージルの囁く声が、いつもに比べ熱を含んでいる。耳朶をふにふにと揉むようにされて、 ダンテは我知らずぞくりとして細い躰を竦ませた。

「んっ……」

冷たい指が首筋をなぞり、するりと襟の中に入ってくる。しかし掌が侵入してくるわけでは なく、あくまで指先だけが悪戯をするかのように鎖骨を撫ぜられるばかり。何となくもどかしく 感じて、ダンテはバージルの大腿に手を置き、揺するようにした。

「どうした」

などと、空々しく言うバージルが憎たらしくて、ダンテは頬を膨らませた。実年齢の姿のままで あったならかなりひいてしまう仕種であるが、今のダンテは見目の歳以上に幼く見えるのだから、 頬を膨らませても可愛いと言える。
バージルが愛猫を見るように目を細めたが、ダンテにはその意味など判らなかった。

「こちらに来い、ダンテ」

バージルがダンテの脇に手を差し入れ、ぐいと引き寄せる。背中には飾り帯があり、脚は キモノの所為で開くことは出来ない為、バージルの膝に行儀良く横向きに座るしかない。 ちょこんと、端から見れば本当に女の子のように兄の膝に乗ったダンテは、バージルの厚い 胸板に頭を預けて瞼を閉じた。酒が回っているのか、どうも眠くなってきたのだ。しかも バージルにくっついていると、ひどく心地が好い。眠るには最高のコンディションだ。
ダンテがうとうとしかかっていることに気付いたのか、バージルが珍しく声に出してくすりと 笑った。

「眠いか、ダンテ?」

そう訊かれたのは、判った。しかし自分がどう答えたのか、ダンテは判らなかった。もう ほとんど眠りかかっているからだ。バージルの笑みが深くなる。もう一つ、バージルに何かを 訊かれた気がしたが、覚えてはいなかった。





「ん……んんっ……」

やけに甘ったるい声がする。それもすぐそばでするものだから、ひどく耳障りだ。煩い。 眠いんだから静かにしろ。そう声に出そうとするが、言わせるものかというように、また 甘い声がダンテの声を遮ってしまう。

「ぁ、ん……ぅんっ……くふ……ぅ、あッ……あ……?」

ふっと目を開けたダンテは、目の前に兄の顔があることを純粋に不思議に思った。まだ 覚醒しきらぬ頭で、そういえば、酒を飲んでいたら眠くなって、バージルに凭れて眠って しまったのだと思い出す。ではバージルはあれから、ずっと同じ姿勢でいたのだろうか。 それにしては、バージルが目の前にいるというのは奇妙ではないだろうか。

「……、れ……?」

「あぁ、起きたか」

平坦な声はバージルのものだ。節の高い指が、ダンテの額をつるりと撫ぜる。やはり、冷たい。 思わず「んっ」と吐息をもらしたダンテに、バージルがくつりと笑う。寒気ではないぞくりと したものが背筋を這い上がってくる感覚があって、ダンテはそこで初めて自分の現状を知るに 到った。

キモノの裾が、随分派手に乱れている。それだけならば寝乱れたのだと思えもするが、 違った。割れた裾からあらわになった脚の間に、バージルの手が入り込んでいるのだ。帯は 締めたままなので股はどうにか隠れているが、バージルの手が何をしているかなど、見なくとも 判る。判りたくもないが。
また、ぞくっとした。現状を把握したくなくて、少し思考が停止していたダンテに、バージルが 現実を突き付けるかのように指を動かしたのだ。ダンテの粘膜を犯す指を。

「あぅっ」

油断をして、思いがけず大きな声が出てしまった。ダンテは顔を赤くしたが、バージルは どこか愉しげだ。

「良い声だ」

揶揄されたように聞こえて、ダンテはかっとなった。

「煩ぇっ、アンタ何してんだよ!」

怒鳴ると、バージルはしれっと宣った。

「誘ったのはお前だろう」

「誘ってなんか……ぁっ……!」

ぞろりと粘膜を掻かれ、ダンテは咄嗟にバージルにしがみついた。確実にわざとだろうが、 バージルの指が前立腺をかすめたのだ。

「やっ……も、やだ……!」

この縮んだ躰が、やけに敏感であることは既に判っていることだ。しかし、自覚している 以上に、ダンテは今のバージルの悪戯に激しく感じてしまった。バージルにしがみついて快楽が 通り過ぎるのを待った。まさか仔猫のようにぷるぷると震えていようとは、自覚していない ダンテである。
バージルが、何を思ったか不意にダンテの後孔から指を引き抜いた。突然の喪失感に、 ダンテは顔を上げてバージルを見上げる。何をされるのか(間違ってもバージルが行為を やめるとは思わない)、ダンテは判らずに不安げな声をあげた。

「バージル?」

兄の碧い双眸が、くっと細められる。

「腰を上げろ。ダンテ」

バージルの命令口調には、もう慣れているダンテだ。しかし僅かの疑問も持たずにバージルの 言うなりになったのは、まだ酔いが醒めきっていないからかもしれない。
ちょっと浮いたダンテの腰を、バージルが掴んで力強く抱き寄せる。バージルの脚を跨いで 膝立ちの恰好を取ると、当たり前だがキモノの裾はさらに乱れてしまう。先刻から乱れていた ものの、ダンテは妙に落ち着かない。着崩れを気にしてもじもじするダンテに、バージルが くすっと笑った。

「裾のことなど気にするな。汚れも気にする必要はない」

それよりも、とバージルはダンテの小さな尻を悪戯っぽく撫でた。びくっと身を震わせた ダンテの耳に、低く囁く。

「腰を下ろして、自分で挿れてみろ」

バージルに手を掴まれ、導かれた先には既に猛ったバージルの屹立。ぎくっとしたが――――やはり まだ酔っているのに違いない、とダンテは思った。
嫌だという言葉すらなく、ダンテはバージルのものに手を添え、腰をそろそろと下ろして自分の 秘蕾にひたりとあてがう。素面では、相当その気になっていなければ出来ないことだ。

「んっ……」

バージルが笑みを湛えてこちらを見ている。愉しんでいることは確実で、悔しいと思いながらも ダンテはぐっと身を沈めた。酔っているのだ。だから、見られていてもこんなことが出来て しまう。見られていることで、昂奮してしまう。

「あぁっ――――!」

ず、とバージルが内壁に押し入って来る。けれど自重だけでは半ばまでしか咥えることが出来ず、 腰を上げることも出来ずにダンテは縋るようにバージルを見た。

「っ……ばぁ、じる……」

「どうした、まだ半分だろう」

判っているくせに、わざとらしい。ダンテは唇を噛んでバージルを睨んだ。しかしバージルは 笑うだけで、何もしない。ダンテは何故だか怖くなって、バージルの胸をどんと叩いた。 といっても、力などほとんど入ってはいないが。

「……ジルっ……い、じわりぃぞ……ッ!」

バージルはダンテの手をひょいと掴み、首に回させる。ダンテはぎゅうっとバージルの首に 抱き付き、早く、とバージルにねだった。バージルがくつりと笑い、仕様のない、などと囁いて ダンテの腰を掴み、一気に引き下ろした。

「ひぁあ……ッ!」

勢いよく最奥を突き上げられて、ダンテの喉を高い嬌声がつく。衝撃に堪える間も与えず バージルがダンテの細い腰を上下にさせるものだから、ダンテは息継ぎをするのもおざなりに 喘いだ。

「あぁっ! ……ぁんっ、ひ……ぃあ……ッ、バ……ジル……!」

狙い澄ましたように、バージルはダンテの弱い箇所ばかりを突き上げては粘膜を抉るように する。ぎゅっとバージルにしがみつくのは良いが、陰茎がバージルの服に擦れてしまい、 いらぬ快楽を引き出していく。腕を緩めれば前への刺激はなくなるが、しかしダンテはそうは しなかった。
気持ちが良いと思ってしまったのだ。首をもたげた陰茎が、とろとろと先走りを こぼれさせてバージルの服に染みを作る。それが判っていても、やめられない。ダンテは より強い快楽を求めて、自ら腰をゆらめかせた。

「はぁ……っあん……っ……ふ、ぅ……あ……」

浅ましく溺れる自分を、バージルはどう思っているだろう。そんな不安な気持ちを察したのか、 バージルがダンテの首筋に噛み付くようにキスをした。

「何も考えるな。俺に集中していろ」

「んっ……」

何も。初めから、バージルのことしか考えていないのだけれども。

内壁をぐちゅりと抉るようにされて、ダンテの躰が大きく震える。

「ぁっ……バージル、もう、ッ……あ、あぁあっ……」

堪えきれずに射精した。バージルの開襟シャツに、精液が飛び散ってべったりと濡れる。 当然、キモノも同じだ。粘質の白濁でいやらしい染みを作ってしまう。
ダンテから遅れること僅か、バージルもまたダンテの内で自身を開放した。最奥に熱い奔流を 叩き付けられ、ダンテはびくりと全身を強張らせた。あまりに量が多かった所為か、こぷりと、 卑猥な音をさせて結合部からバージルの放ったものが溢れてしまう。

「ぁ……はぁ……ん……っ、ふ、……」

射精の(どちらの、かは自分にも判らない)余韻に陶然と目を瞑り、ダンテは荒い呼吸を 繰り返した。ひどく全身が怠い。喉もひりひりしているし、何より繋がったそこがじんじんして、 感覚が鈍くなっているのが判る。

「ダンテ、」

バージルがダンテの腰の辺りを撫ぜた。何、とダンテは息だけで応じる。

「たった一度きりで、もう終わりか?」

「え……?」

もう、充分だとダンテは思うのだが……どうやらバージルは違うらしい。まだ穿たれたままの そこを意識してみると、バージルのものが全く萎えていないどころか、一度も達していないのでは ないかと思う程に逞しい。
ダンテはぎょっとした。まさか。

「やはり着物姿のお前を犯すのは、良いものだ」

死刑宣告に近い言葉をさらりと吐き、バージルはダンテの了承など取る気もないらしく、 ダンテをソファーに押し倒した。もはや着崩れなど微塵も気にしていないらしい。待て、と ダンテが抗議の声を上げることを許さず、バージルが早くも腰を進めてくる。 それも、激しく。

「ッ! ひっ! あっ、バ、ぁジ……うぁっ! あ……!」

喋らせてももらえず、ダンテはただ、バージルの責めに合わせて喘ぐしかなく……
結局ダンテは翌日の昼近くまでバージルに挑まれ続け、その後丸二日、ベッドから出ることは おろか、躰を起こすことも出来なかった。



何ごとも、程々が一番である。



















戻。


「大人V×子Dで姫初め、酔って上機嫌な弟を兄が美味しくいただく。」
というリクのもと、書かせていただきました。どうでしょう…?
遅くなってしまって申し訳ありません。

[08/1/7]