*表の夢のものから続いているので、
これだけでは話が全くわからないと思われます。
ので、ご注意下さい。

子バージル×大人ダンテです。
特殊性もこめてのR-18です。

以上を納得なさった上で、スクロールどうぞ。

最終的には自己責任ですので、あしからず。

























揺心ユレルココロ











暗い影が落ちる。闇の帳に紛れ、ゆき場をなくしたものが流れつく。










自分が泣いているのか否かさえ、ダンテには判らなかった。総ての感覚が、どうしてか鈍い。

「ダンテ、」

呼ばわる声は幼い。しかしその声が持つ支配力に、ダンテは小さなベッドの上で顔を上げた。 向かいのベッドに腰掛けた子供は、その歳には不相応の威圧を人に与える。生まれついての支配者。 ダンテを縛って離さぬ唯一のもの。

ダンテはのろのろとベッドからおりた。傍らには裂けたところから綿をはみ出させた ぬいぐるみ――――ダンテがこの部屋に流れつくたびに、引き裂いている。
ひやりとした床に膝をつけ、獣のように四足で反対側のベッドのそばへ寄る。人間としての 尊厳やプライドを捨てたつもりはないが、彼の前ではそれらはたちまち意味のないものへと変じて しまう。ダンテを支配する唯一の前では、何もかもが希薄だ。

「バージル」

ひどく愛おしげに名を呼んだダンテに、彼は微かな笑みを浮かべた。同じだ。ダンテを捨てた ものと同じ笑み。しかし違うことは、彼はダンテを捨てていないということ。
飼ってやる、と彼は言った。ダンテはそれを、嬉しいと思った。あの男はダンテを捨てたけれど、 彼は違う。少なくとも、まだ捨てられることはない。そう、まだ。

彼の手が伸び、ダンテの頬を指先でなぞった。ふるりと躰が震える。それは確かな快楽だ。

「ぁ……」

小さく声を漏らしたダンテを、彼は冷ややかな笑みをもって見つめている。あの男はダンテの 乱れるさまを見ると、いつもこんな目をしていた。だから、判る。支配者は被支配者の屈服する さまに悦楽を覚えるのだ。そしてどこまでも純粋かつ残酷な王は、己の民を征服し尽くしても 充足を得ない。
充足を得ることはすなわち、飽くということだ。それを、ダンテは最も恐れる。

「どうして泣く?」

問われ、自分は泣いているのかとぼんやり思った。彼は頬を伝った涙をすくい、濡れた指先を ダンテの唇に押し当てた。塩辛い。ダンテは不意に笑った。笑わずにはおれなかった。
惨めだ。何という、惨めさだろう。双子の兄に捨てられたことが、また捨てられるかもしれない ことが、こんなにもこわいだなんて。涙が出る程、つらいだなんて。

悪魔も泣き出すデビルハンターが、聞いて呆れる。

ふふっ、と声を上げて笑うダンテを、彼はどう思っただろう。気が狂ったと思ったかもしれない。 それでも良い、とダンテは思う。

「なぁ、バージル」

ぺたり、と彼の足の甲に触れ、上目遣いに彼を見つめた。

「何を、しようか?」

壊れた心は壊れたままで。こちらを見下ろす冷たい眼差しに、ダンテは砕けてばらばらになる。

「脱げ」

彼の命令はダンテを生かす唯一。一本の藁に縋るように、ダンテはシャツを脱ぎ捨てた。素裸に なることに抵抗はない。見ているのは彼一人であるし、膚をさらすことを恥じらう男など気色が 悪いだけだと思っている。

膚をなぞる、彼の視線。デスクのライトだけが光源の室内は薄暗く、鍛えられたダンテの肢体を どこか妖しく照らし出す。もっとも、ダンテはそれを意識しているわけではない。曲がりなりにも 便利屋を営み悪魔を狩ることを生業としている手前、躰が貧弱ではどうにもならない。自身の 容貌がそれなりに秀でていることは自覚していても、それ以上の認識はないのだ。
強い視線にさらされ、ダンテは否が応にも膚を粟立たせる。ひくりと反応を示す下肢に気付き、 彼が目を細めた。ダンテは尻をもぞもぞとさせる。

「脚を開け」

隠すな、と命じられ、ダンテは頬を引きつらせたが言われるままに膝を開いた。脚の間のものが 恥じらうように震えるのを見てしまい、無意識に頬を赤くする。卑猥だが、ダンテを見下ろして いるのがまだ成人には遠い子供である為に、異様な光景だ。
床に視線を泳がせているダンテを眺めていた彼が、ふと思い付いたように口を開いた。

「自分でして見せろ」

何をか。彼の示すものはダンテの下肢、ゆるく鎌首をもたげる陰茎だ。それを自分で扱いて 見せろと彼は言うのだ。
ダンテは惑った。彼の求めに応じないわけにはいかない。しかし自慰を人に見せるなど羞恥が 勝ちすぎる。

否とは言えない。しかし。

手を腿の辺りに添わせたままもじもじしていると、苛立ったような彼の声にダンテはびくりと した。

「もたもたするな。早くしろ」

彼が飽いてからでは遅い。ダンテは彼の視線を意識せずにはおれなかったが、そろそろと自身を 掌で握りこんだ。すでに熱い。己の浅ましさに泣きたくなる。こんな躰に、なりたくてなったのでは 決してないのだけれど、それはただの言い訳でしかない。

「んっ……ふぅ……」

切なげなため息がもれる。手を上下にして自身を擦れば、快楽がじわじわと染みるように躰を 侵していくのが判る。理性で感じ取ることの出来るのはそこまでで、少しもすればより強い快感を 求めて慾望が理性を凌駕し、躰を乗っ取ってしまう。そうなれば、身も世もなく、乱れる。
浅ましいと判っていても、ダンテは手を止めることが出来ない。

「ぁ……はぁ、ん……」

片手で茎を擦り、先端を弄り、もう一方の手で根元の双球を揉むようにする。あの男の仕種を 真似ていることに気付かず、ダンテは快楽を貪った。

「んんっ……ふく、ぅ、あっ、……」

涙が出る程に、この躰は、

「淫乱、と言うのだろうな」

お前のようなものを。彼の冷笑に、ダンテは肩を跳ねさせた。淫乱。何度も耳に吹き込まれた 蔑みの言葉。声音こそ違えど、同じ響きにダンテは凍り付いた。しかし手は、まるで別の 生き物かのように自身を扱くことをやめない。やめられないのだ。彼の冷たい目にすら、ダンテは ある種の快感を覚えてしまっている。
マゾヒズム、とは違う。ダンテが膝を屈するのは双子の兄に対してのみで、言い換えれば、 ダンテを支配し征服出来るのは双子の兄をおいて他にいない。バージル。唯一彼だけが、ダンテを こんなふうにし得るのだ。

「……バ……ジルぅ……」

濡れた声で呼ばわる。彼はひょいとベッドを下り、ダンテの脚の間に膝をついた。そしてダンテの 下肢に手をやり、そこに触れる。いや、正確に言えば、握ったのだ。ぎゅう、と。

「っひ……!」

少しの痛みと同時に痺れるような快楽が襲い、ダンテはびくりと震えて精を吐き出した。 彼は羞恥に染まるダンテの表情を観察しつつ、空いた手でダンテの耳を掴んだ。

「まぁ、こんなものか。……褒美をやる」

居丈高に宣い、彼はダンテの唇に唇を押し当てた。その歳でどこで覚えたのか、当たり前のように 舌を差し込まれて、しかしダンテは疑問も抱かず喜んで彼のキスを受け入れた。

「ぁ、ん……んん……っふ……」

瞳や言葉こそ冷たい彼だけれど、褒美だと言って与えてくれるキスは冷たさとは裏腹の激しさを 秘めており、ダンテが舌を差し出せば意を汲んだように甘く吸われる。緩急を心得たようなキスは、 ダンテをひとたまりもなく蕩けさせてしまう。
反面で、違う、と心が叫ぶのだ。

「ん、ふぅ、く……ぅん……っ」

技巧云々ということでは、ない。彼が、バージルという名を持つ“兄”だからこそ、ダンテの 思考をも蕩けさするのだ。けれど、だめだ、と。どろどろに溶けた思考が叫んでいる。
彼は“兄”だ。しかし、違う。

「は……ぁふ……」

唇が離され、熱っぽい吐息が漏れる。躰は疑いようもなく猛り、疼いて仕様がない。ダンテは 救いを求めるように彼を呼ばわった。彼はダンテの肩を押し、抵抗もなく床に転がったダンテに 俯せになるように命令する。ダンテが逆らう理由などない。それなのに、どうして、違うと叫ぶ心を 制することが出来ないのだろう。

後ろからの蹂躙に背をしなやかに反らして、快楽に耽る。これで良いのだと、言い聞かせるように 心を宥めすかしている自身に、ダンテは気付いていながら顔を背ける。

兄は、ダンテを捨てた。だからもう、こうするしかないのだ。
しかしなお、心は叫ぶことをやめようとしない。

(バージル)

アンタが欲しい。アンタでなきゃ嫌だ。なのに、どうしてアンタは。

「バー、ジ……る……」

いらえは、ない。











幼い頃、毎日のように見ていた夢があった。その内容は起きた時にはほとんど覚えていなかった けれど、この歳になって、思い出したことがある。
バージル。夢の中で孤児になっていた自分を、拾い、慈しんでくれた優しい男。あれは確かに、 バージルだった。

思い出すきっかけはバージルの夢――――そう、やはり夢なのだ。

滅多に夢など見ないバージルが見たそれは朧げで不確かなものでしかなかったけれど、ダンテの 記憶を呼び覚ますには充分だった。
幼い自分とバージルとが、どうやって夢と夢とで結ばれたのか、原因など判らない。しかし 自分と幼いバージルが夢で結ばれたのは、頷ける。二組の双子が、それぞれ違う片割れを選んだ。 ひとりになることを望まぬが故に、こうなることは必然であったのだろう。

そうしてもう一つ、思い出した。幼かった頃、兄がある時期、全く自分をかまってくれなく なったことがあった。無視、というには優しすぎる程、兄の態度は酷いものだったように思う。 毎日、泣き暮れた。泣いて、泣いて。けれどその後のことがどうしても思い出せない。

夢の終わりを、確かに見た筈なのだけれども。










ふ、と覚醒したダンテは、天井が見慣れたものに戻っていることに嘆息した。行為の最中に 意識を失い、そのまま夢が醒めてしまったらしい。どうせなら、あのまま夢の中に閉じ込められて しまいたかった。
醒めない夢などないと判っていても、それでも、バージルの夢は続いていると知っているから。

目を閉じる。こめかみを、涙が一粒流れて落ちた。



















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