優愛
暑くなったかと思えば突然寒さが舞い戻り、寒いかと思えばきつい陽射しが膚を焼く。まだ
寒暖の定まらない、春の上旬。とある家では季節に振り回される少年がいた。
「暑い」
極度の暑がりであるダンテは、半袖のシャツとハーフパンツ姿で嫌そうに呻いた。床に座り込んで
膝を立てている為、小さな膝頭があらわになっている。少しでも冷やそうとしてか、革張りの
ソファーを細い腕が定期的に撫でる。
暑い、と繰り返すダンテに、バージルは暑さなど微塵も感じさせぬ凍った声で応じた。
「煩い」
ダンテと違い、バージルは長袖の開襟シャツをきっちりとボタンも留めて着込んでいる。
バージルはダンテ程暑さが苦手ではない。激しい寒暖の差を感じはしても、ダンテのように
喚くことはしない。ダンテは極端なのだ。
冷たい反応しか返さないバージルに、ダンテはむすっと唇を尖らせた。そうしていると、本当に
子供だ。見た目は完全に子供なのだから、どんな表情をしていようと同じかもしれないが。
「暑いもんは暑いんだよ」
恨みがましく呟くダンテの襟首を、バージルはちょっと猫の首根っこを掴むようにした。
ひゃっ、とダンテが首を竦める。
「な、何すんだよっ!?」
ダンテは首をおさえ、腰を捻って振り返った。バージルを睨むダンテの瞳には、驚きと困惑と
僅かな怯えが混じって浮かんでいる。
バージルはダンテの赤くなった耳を摘み、平然と言った。
「冷たいか?」
よくダンテに「冷たい」と言われているな、と思い出したが為の行動だったのだが、あまりにも
突然すぎるものだからダンテが驚くのは当然だ。が、我が道を行くバージルにはダンテが何故驚く
のか判らず、むしろ全くの無視だ。
ダンテはバージルの指を耳から外させようと手を持って行き、触れたところで手を止めた。
「……冷たい、けど」
気持ち良いと言うのが癪、なのだろう。暑さではなく赤みのさした頬が可愛らしくて、
バージルは目を細めた。
「けど、何だ」
耳を軽く引っ張るバージルを、ダンテはキッと睨む。
「何でもねぇよっ」
あっても言わねぇ。憎まれ口を叩くダンテに、バージルは片眉を吊り上げた。そしてダンテの
耳から指を離し、ぐ、とダンテの赤い頬をつねった。柔らかい頬はむいと伸びる。が、やはり痛みは
あるらしく。
「! あぅっ……」
ぺちりとバージルの手を叩き、小さな手で手首を掴んで外させようとするダンテの必死さは
ある意味見物だった。そしてダンテが必死になる程、バージルはきつくダンテをつねる。
「痛ぁ……ッ! はなせよ!」
大きな瞳に涙を溜めて、ダンテはバージルの手首をぎゅうと掴む。爪が皮膚に食い込むが、
昨日切ったばかりのそれはバージルに僅かの痛みももたらすことはない。むしろ抗うさまは
幼いがゆえに愛らしく、気分としては子犬か子猫を苛めているようだ。
自分のたちの悪さを自覚した上で無視をして、バージルはダンテの頬をつねったまま、
手を手前に引いた。頬を引っ張られたダンテは、痛いと叫びながらバージルの膝に顔を乗せる形に
なる。
「痛いか?」
バージルが白々しく言えば、ダンテは顔を歪めた。
「判ってんなら離せよ!」
「痛いか、と訊いたのだが?」
むい、と手を捻る。とたんにダンテはバージルの脚をばしばし叩き出した。
「いだぁっ! 痛いって……ッ!」
やめて、と。思わず口をついて出たのだろう。幼い頃のような口調だ。実際ダンテは子供時分、
バージルとは違いひどく純真で無垢な少年だった。口調もそうで、一人称は「ぼく」。こちらを
窺うように「ね?」と首を傾げるさまなどは可愛らしく、子供心に牡を意識してしまった程だ。
性を自覚するのがおそらく人よりも早かったバージルは、その頃から、ダンテだけを
その対象として据えていた。だから歪んだのだろうな、と理由をダンテに押しつけて、バージルは
ダンテの頬から指を外した。
ダンテがほっとして頬をさすろうとする。が、バージルはダンテの手を掴み、綿毛を
持ち上げるような軽さでダンテを膝に抱き上げた。事実、バージルの膂力にかかればダンテなどは
綿毛のように軽い。
あまりにも当たり前になってしまっているが、今のダンテは尋常では有り得ぬ姿だ。
もう去年のことになる。ダンテは不承不承請けた仕事で悪魔と対峙し、毒を食らった。その毒の
作用によって躰が縮み、十四かそこらの子供の姿になってしまったのだ。
縮んだままで年を越し、ダンテは元に戻る気配も見えない。いつ戻るのか、戻る手段はあるのか。
判らぬまま、ダンテの不安だけが増していく。それを、バージルはただ眺めているだけだ。
バージルとてダンテがこのまま、というのは少々案じねばならぬと感じてはいる。しかし、だ。
ダンテのほっそりとした肢体は驚く程バージルの腕に馴染む。元の姿であっても、ダンテの躰は
バージルの為にしつらえたかのように馴染むのだけれども。バージル自身も十四だった頃は、
これ程にぴったりと腕に納まるようには思わなかったものだ。
「? バージル?」
頬をつねられたことなど忘れているのか、ダンテは怒りもせず首を傾げている。バージルの
行動は常に脈絡がなく、それに慣れて―――― 慣らされて――――いるダンテである。
バージルはダンテの腰を引き寄せ、小さな尻を撫でてみた。完全なるセクハラだが、バージルに
表情はあくまでない。触りたいから触る。それの何が悪い、と。セクハラをされる側にすれば
身勝手極まりない考え方をするのがバージルだ。ゆえに、明らかな愛撫の意図をもって尻を
撫でられたダンテが、何をする、と睨んで来ても平然として宣うのだ。
「暴れるな」
黙って触られろ、と。絶句するダンテに満足して、また触る。というより、揉む。手つきは
ともかく表情は淡々としているだけに、ダンテがいたたまれなくなるのだとはバージルの
知ったことではなく。
「肉が薄いな」
などと呟き、こちらもか、と首筋に噛み付いてはダンテをびくりとさせる。
「ば、バージル、やめ……っ」
嫌だ、と訴えるダンテだが、バージルはいっこうに聞く耳を持たず、むいむいとダンテの尻を
揉み首筋や肩に歯を立てた。
「っん、ぅ、ふ」
ダンテの赤い唇から漏れる吐息は熱っぽい。躰こそ幼くなっているが、中身は変わらない。
むしろ、なまじ躰が快楽を覚えているだけに、困惑はひとしおだろう。バージルにしてみれば、
見目の幼さとは裏腹に快楽に弱く、そのことを恥じてもじもじと身を捩るダンテが可愛らしくて
ならない。
中身は変わっていないのだと、割り切れるような性格をダンテはしていないらしい。そこが、
奇妙な初心さを思わせるのだろう。
バージルの肩口に額を擦りつけ、ふるふると無意識にだろう小刻みに震えるダンテは、まるで
怯える兎だ。食われる恐怖がこちらにまで伝わってくるようで、いっそうバージルの嗜虐心を
煽る。
バージルはダンテの尻を撫でる手をするりと尻の奥まった箇所に滑らせた。同時に右手は自分と
ダンテの間に差し込み、ダンテの股に触れる。びくん、とダンテが肩を跳ね上げた。
「ひゃっ……!」
柔らかい綿のハーフパンツ越しとは言え、前と後ろを同時に刺激されてはダンテもたまった
ものではない。やだ、だとか、やめろ、だとかダンテが喚く。
「黙れ。このまま犯されたいか」
慣らさないまま、と言外に含ませると、ダンテはぎょっとしたように息を飲み、それから唇を
噛んだ。
「……どっちにしろ、痛くするくせに」
むにゃむにゃと恨みがましく呟くダンテの性器を、バージルはちょっとすり上げた。
「ひんっ!」
思いがけぬ快楽に高く啼いたダンテの耳朶を食み、バージルは囁く。
「俺はいつも優しいだろう?」
掌に納まってしまう小さな性器をやわやわと揉みしだき、後ろを弄ってやりながら「どうだ」と
嘯けば、ダンテは濡れた瞳でバージルをキッと睨み付け。
「これのどこが優しいんだよ、馬鹿バージルっ!」
やれやれ、仕置は決定か。バージルは一人ごち、にやりと笑ってダンテの喉に噛み付いた。
正直に言います。ダンテが縮んだ理由、忘れてました。
そういや何か書いたなぁ、と。思い出してよかった。
てゆうかこれもまだ間違ってる気がしないでもないけど…
そのときはすいません。記憶力が乏しいっていうか皆無ですいません。