壊疽
幼い頃、ダンテがよく双子の兄に言われた言葉がある。それはただ一言、
「煩い」
とだけ。
だから黙れだとか、鬱陶しいだとか、そういった言葉はなく、ぼそりと言うのだ。
煩い、と。
言われた瞬間は、ダンテも黙る。押し黙り、しかしものの十数秒で、また話し出す。
それを、繰り返していた。
そのやり取りは、実のところ、歳を重ねた今でも代わり映えなく続いていたりするのだ。
「なぁ、バージル、」
返事はない。これはいつものことで、ダンテは気に留めず勝手に話を続けた。
「昨日そこの路地歩いてたらさぁ……」
話題は、いつも他愛のないものだ。
他に話す人間もいないから、ダンテは無愛想な兄に取り留めもなく言葉を投げる。
無論、投げ返してくれるとは、端から思っていない。
「それでそいつら全部片付けたと思ったら、血の臭いに野犬が寄って来やがって……」
ダンテのする話は、大抵が血腥いものだった。彼ら兄弟は人間ではないものの血を
受け継いでおり、その血が彼らを、異形を狩る者として駆り立てるのだ。
時には毎日、彼らは異形のものを狩る。
「そんなことしてる間に夜が明けちまってさ、ったく、詰まんねぇ仕事だったぜ」
話が一段落付くと、バージルは決まって言う。
「――――煩い」
ダンテはいつものように口を噤み、少しの間、バージルを見つめる。
ちらと上げられたバージルの目と、視線が絡む。そうしてまた、口を開く。
「あぁ、なんか今日はゆっくり寝たいな」
バージルは、また沈黙に戻る。
他愛のない、面白くもない、過ぎて行くだけの日々。
何もない、詰まらない、ただそこに在るだけの日常。
それが、懐かしいと思う日が来るのだとは、夢にも思わずに。けれど、もしかすれば、
予感はあったのかもしれない。
幼いあの頃から。
ずっと。
――――きっと。
「なぁ、バージル」
答える声は、ないと知っているけれど。
それでも。
「なぁ、……」
話を、しよう……?
DMCはダンテ主観のものが多いかもしれない。
ようは兄主観が書きにくいということで…
ともかくも、短くてすいません;
寝る直前に30分かけずに書きました(ケータイに)