過陽
一月一日、午の刻――――。
窓から差し込む、過ぎる程の明るい陽光に眠りを妨げられ、ダンテは端正な顔をしかめた。
光を嫌がるように寝返りをうち、肌触りの良い毛布を引き寄せる。
隣に毛布とは違う暖かいものを感じ、それにすり寄るように体を丸めた。
「ん……」
機嫌を取り直して再び眠りに落ちようとするが、しかし。ダンテははたと気が付いた。
眩しい?
暖かい……?
「……んぁ……?」
眉間に皺を寄せ、今にも落ちそうな瞼をこじ開ける。と、
「起きたか、」
真上から平坦な声が降り、ダンテは一瞬で覚醒した。
「……!」
がばっと毛布を蹴る勢いで飛び起きる。窓の外は明るく、今が昼頃だということを
知らせている。何故なら南に面したこの部屋は、東側に別の建物があるため昼近くにならねば
太陽の光が当たらぬのだ。
いつ日付が変わったのかすら記憶にないダンテにとって、これは驚きと言うしかない。
ダンテは窓から目を引き剥がし、ぐり、と後ろを見やった。双子の兄・バージルは、
相変わらずふてぶてしいまでに落ち着き払って此方を眺めていた。
「バージル、てめぇわざと起こさなかっただろ」
睨みつけたところで無駄だと知ってはいるが、そうせずにはおれない。いや、それ以前に、
犬の耳と尾を生やした人間に睨まれたとて、誰も怖いとは思わぬだろう。
むしろ毛を逆立てるという言葉通り、耳と尾がぴんと逆立っているのだから、
可愛らしくすら見えるのだ。
随分前から起きていたらしいバージルは、やはりしれっとしてダンテに応じる。
「何がだ」
ダンテは決して朝に強い訳ではなく、むしろ必要がなければ朝日を拝むことなど稀な程だ。
バージルは暗にそれを指して、起こさなかったからと怒るダンテに逆に問うた。
ダンテとてそれくらい自覚はある。あるが、しかし、今日だけは別なのだ。
何故なら今日は……
「元日って言や、初日の出だろうが! あぁっ、くそっ!
こんな時間で日の出も何もあるか、畜生!」
そう、新年一日目のめでたい日なのである。何がめでたいのかは別として。
「ダンテ、毎年思うのだがな、お前のその拘りは何なのだ?」
「あぁ? 悪ぃかよ?」
「そうは言っていない。何なのか、と訊いている」
「初日の出って言やぁ新年の定番だろ? てめぇこそ何言ってんだよ」
「……ダンテ、お前」
「あん?」
「親は日本人か」
バージルはあまり上品な言葉とは言えぬ単語が付く程真面目だ。ダンテは一瞬言葉をなくした。
その時点で、ダンテはバージルに飲まれている。
無論、バージルは意識してやったことではない。
「…………なぁ、俺とお前は双子だよな」
「認めるのは不本意だが、そうだ」
「てことは、だ……俺の親はお前の親と一緒だろ! 何だ、日本人て!」
降下しかけていたダンテのテンションが、バージルの真面目くさった表情と
言葉に、また上昇する。しかもバージルはどこまでも鈍く、果てしなく真面目に、
「違うのか」
などと宣うものだから。
「違うに決まってんだろが! お前本気で馬鹿だろ、馬鹿バージル!」
「お前に馬鹿呼ばわりされる程、自分を棄てた覚えはない」
「どういう意味だよ、それは!?」
「それで、起きるのか?」
バージルは腕を伸ばし、怒り立ったダンテの尾にふわりと触れる。
掴むかどうかという微妙な力加減に、怒りのせいで油断していたダンテは
びくっと体を竦ませる。
「……っ……! 俺はもっかい寝るからな!」
邪魔すんなよ! と、ダンテは兄の手を振り払い、
バージルが脚に掛けていた毛布をひったくって頭から被る。
文字通り不貞寝を決め込んだわけだ。やってられるか、と声には出さずバージルをなじって。
昂ぶったテンションはなかなか冷める気配はなかったが、ダンテはぎゅうっと瞼を閉じ、
無理矢理眠りに落ちて行く。隣で、バージルが仕方がないなとばかりに苦笑したことなど、
知る由もなく……。
短くてすいません。
正月ネタとか、間違いすぎですいません。
書いた時は正月だったんです。←ケータイに書くのが常なので。