休暇キュウカ――――続々













散々足でいたぶり、口で奉仕させてどれ程が経ったか。下衣を脱がさぬままに何度も果てた ダンテは、バージルの精液を飲む頃には既にぐったりとしてしまっていた。
バージルはダンテを肩に担ぎ、寝室に放り込んでおいてから夕食を頼み、部屋に運ばせた。 さすがに、今のダンテをホテルの人間に見せるのは憚られる。バージルが他人に見せたくないと 思う程、快楽の余韻に震えるダンテは酷く扇情的なさまだったのだ。

運ばれた料理を一瞥し、バージルは前菜のサラダを一皿とフォークを手に寝室へ入った。 二つ並んだベッドの片方に、ダンテがぴくりともなく横たわっている。犯したわけではないのだが、 肉体的なものよりも精神的な疲労がはるかに勝ったのだろう。

皿をサイドテーブルに置き、バージルはベッドに腰掛けた。俯せに臥せったダンテの、真っ赤に なった目許を指の背でなぞる。ぴく、とダンテの長い睫毛が震えた。ゆるく持ち上がる瞼の下の 蒼い瞳が、僅かにだが曇っている。

「ダンテ、ルームサービスを頼んだ。起きられるか?」

ダンテが臥せっているのは大半が自分の所為であることは判っており、バージルはわざとらしい 労りの言葉などは吐かなかった。ダンテの片目がちらとバージルを見、ぎくりとするようにさっと 逸らされた。

「……? こちらを見ろ」

言うが、ダンテは子供がいやいやをするように顔を羽枕に擦りつける。バージルは少し苛つき、 ダンテの肩を掴み無理矢理顔を上げさせる。一瞬交わり、やはり逸らされたダンテの瞳には、 明らかな怯えがあった。
何故。
確かに拷問じみた責めを与えはしたが、ダンテははっきりと快楽を得ていた。やめてくれと 言って泣きはしても、あの程度のことでダンテが本当に怯えてしまうことなどない筈だ。

「っ……」

ダンテの肩がびくりと揺れ、バージルの手から逃れるようにベッドの端に躰を寄せた。
触れるもののなくなった手を見やり、バージルは据わった目でダンテを見つめる。

「……何のつもりだ」

低い声にダンテがびくっと顔を強張らせる。その反対が、バージルの気分を更に悪くさせた。

「ダンテ、来い」

ダンテの中で何があったのかバージルには判らない。判らないからこそ、苛立ちが募る。

犬の耳と尾をぷるぷると震わせ、小さくなるダンテに、あぁと思う。そういえばダンテは今、 自分以外の人間にはただの犬にしか見えぬのだった。ならば、ルームサービスを運ばせた時も わざわざ寝室に移動させることはなかった。
今更のように思い、バージルは不意にダンテへ腕を伸ばした。ぎょっとしたダンテが、思い 余ってベッドから落ちる。きゃん、と。まるで本当に犬のような声を上げたダンテを、バージルは 訝った。

あまり疑問にも思わなかったが、よく考えてみれば今のダンテは異常だ。バージルに怯える ことが、ではなく、ダンテの姿そのものが。

犬の耳と尾が生えた時点で何かしらおかしく思うべきだったのだろうが、あいにくバージルの 感性は普通とは言い難い。面白い、としか印象になかったバージルが、どうしてこの事態を深刻に 訝るだろうか。
バージルの目にのみ、人に犬の耳と尾が生えた姿に映るということも、随分前から判っていた ことだ。しかしバージルはそれでもなお、この異常性に不審を感じることはなかった。いや、 おかしいとは思ったのだ。しかし、捨て置いた。どうせ放っておけば元に戻るだろう、と。それが そもそもの間違いだったのだ。

「ダンテ、お前は……」

ベッドから落ちたダンテが、バージルが立ち上がったのを見て部屋の隅に逃げる。怯えた おもては、まるで虐待を受けた捨て犬だ。

バージルの目にはまだ人型に映っているが、中身は既に犬のそれになり下がってしまったの だろうか。それでも自分のことが判らないなどと、バージルは思いたくはなかった。

壁に貼りつくようにして震えるダンテの側に、バージルは大股に近寄った。ダンテに逃げ場は ない。追い詰めておいて、バージルはおもむろに膝をついた。

「……ダンテ、」

目を見つめ、手を差し出す。ただそれだけで、後は言葉もなければ何の行動もない。ただ、 待った。

何分か、それとも一時間も経っただろうか。

そろり、と。ダンテが壁から背中を離し、犬のような恰好でバージルの手を少し嗅いだ。 ひくつく鼻が、微かにバージルの指に触れる。そしてダンテが、紅い舌でその指をちろと舐めた。 いかにも怖々といった仕種だが、ちょっと窺うような上目遣いで見上げてくる瞳には、先刻の ような怯えは消えている。
バージルは手はそのままに、ひとつダンテの名を呼ばわった。応じるように、ダンテが鼻を ひくつかせる。

「……ぁ……じる……」

もどかしげに動く舌に、バージルはふっと笑った。どうやら本当に犬になってしまったわけでは ないらしい。一時、精神が異常をきたしていたのだろう。尤も、まだバージルの指を舐めている ところを見ると、完全に精神がダンテのものに戻ったわけでもなさそうだが。それは徐々に 回復する筈だ。

先刻と同じか、似通った責めを繰り返せば、どうなるか判らないけれども。

「来い、腹が減っただろう」

言って、抱き上げてやろうとダンテの腰を引き寄せる。ダンテは少し戸惑ったように腰を 揺らしたが、拒むことはしなかった。バージルのなすがままに、身を預ける。

ダンテを横抱きにし、寝室を出た。サラダの皿を置いて来てしまったことに気付いたが、 構うまいと放っておく。どうせ次の晩もこの部屋で眠るのだ。

バージルはダンテを柔らかい絨毯におろし、自分は安いホテルでは考えられぬ調度品めいた 椅子に腰掛けた。膝に暖かい感触がして、ダンテが手を乗せたのだと気付く。
ぴこぴこと犬の耳が動き、ぱたぱたとはたきのように尾が絨毯を叩いている。
可愛いものだと、改めて思う。しかしそろそろ、直す方法を考えてやらねば、さすがに 不憫だ。……と、思わなくもない。

バージルの脚を踏み台にして伸び上がり、居並ぶ料理を興味深げに嗅ぐダンテの口に、 一口大に切り分けられたステーキを入れてやった。





バージルの手から与えられた料理をもそもそと咀嚼するダンテを、何を思ってか自分でも 判らぬまま、抱いた。
服は引き裂くようにして剥ぎ取り、下肢をワインで濡らしただけで貫いた。みしり、と嫌な音が して、余りの苦痛にダンテが呻き、バージルの肩に爪を立てた。鋭く伸びた爪が肉に食い込んだが、 バージルには痛みすら甘美なものに感じていた。

痛みを早く快楽にすり替えようとしてか、がくがくと腰を揺らすダンテの下唇を、ぢくりと 囓る。血が溢れ、口内に鉄錆の味が充満した。甘い。
口の周りを朱に染め、バージルはダンテの唇を舐めながら囁いた。

「旨いか、ダンテ?」

突き込んだ肉を指して言えば、ダンテは半ば朦朧とした瞳にバージルを映し、笑みを浮かべた。 おそらく無意識のものだろう。痛みはまだ続いている筈だ。しかしダンテの躰はバージルに 犯されることにあまりに慣れ、かつ快楽を知りすぎているのだ。
苦しげな吐息は、少しずつ官能的な喘ぎに成り代わろうとしている。

「ぁっ……んふぅ……っ」

椅子に腰掛けた膝の上に乗せたダンテを、下から突き上げる。ダンテの支えはバージルのみ。 しがみつき、喘ぎ苦しむダンテを、バージルは一層強く揺さぶった。

「ぁあっ! やぅ……ばぁ、じ……ぃあぁあっ!」

嬌声が響く。バージルは無造作に手をダンテの下肢に伸ばし、いつの間にか張り詰めた陰茎に 絡ませた。びく、とダンテが腰を揺らし、涙の溜まった瞳でバージルを見た。快楽にけぶった 蒼い瞳に、バージルは笑んで見せる。

「お前は先刻、散々抜いてやっただろう」

今度は俺の番だ。そう言ってやれば、ダンテは顔を歪めた。

「そ、んな……ぁッ……」

口答えをするなとばかりに、バージルはダンテを突き上げた。

「や、ぁっ、あ……!」

指で戒めたダンテの先端から、透明のものがぷつりと零れる。が、吐き出すことが出来ない 為に、雫のみがぷつぷつと溢れてはバージルの手を汚していく。

「ふん……いやらしいな、ダンテ。この程度、堪えることも出来んのか」

わざと冷ややかに揶揄し、バージルは仕置だと囁いて内壁のある箇所を何度も突いてやる。

「やぁっ! や、やめ……ひぃ、ん……ッ!」

バージルがダンテの最奥に精を叩きつけた。ダンテは一瞬息を止め、どくりと注がれる精液の 波に自らも達したような錯覚に陥ったか、バージルの肩に額を押しつけ、ふるふると 震えている。
へにょりと垂れた耳を、バージルは舌ですくい上げるようにして舐めた。途端、ダンテが過剰に 肩を跳ね上げる。

「ひゃぅッ……!」

短い毛が舌に残るが、不快とは思わなかった。舌先を耳の奥に差し入れてみる。びくびくと 全身を震わせるダンテがいかにも初々しくて、バージルは達したばかりの自身が滾っていくのを 感じた。それを身の内に納めているダンテには、より生々しく変化が伝わっているに違いない。

「ひ、ぅ……ばぁじる……でかす、ぎっ……!」

生理的なものか、ぼろぼろと涙を零しながら睨んでくるダンテに、バージルはくつりと 笑ってやる。

「ここは悦んでいるようだが?」

指先で、いっぱいに拡がり絡み付く襞をくすぐるようにつつく。と、そこはひくりと収縮して、 強くバージルを締め付ける。

「や、いう、な……て……ッ!」

顔だけでなく首まで真っ赤にして、ダンテがぷいと顔を背ける。その仕種がまた可愛らしく 映るのだと、妙に鈍いところのあるダンテは気付きもしないのだ。

バージルはくっと目を細め、テーブルにダンテを組み敷いた。並んでいた皿は、腕のひと払いで 絨毯の上に落としてしまった。高級な絨毯も、バージルにかかれば一セントの価値もないものに 成り果ててしまう。

突然のことに驚き、目を瞠ってこちらを見上げてくるダンテの脚を、バージルは肩に引っ掛ける ように抱え上げた。

「あれで終わりとは、まさか思っていないだろう?」

嘯いて、バージルは言葉を失くしているダンテを一際深く犯した。

テーブルに乗り切らなかった腰に生えたふわふわの尾が、卑猥な律動に合わせてふらふらと 揺れた。


















前?
次?
戻。


ダンテがちょっと犬化しかけましたが、慌てて軌道修正して快復。