休暇キュウカ――――続











エンツォを脅し……もとい、頼み込んで用意させたホテルへ行き、名を名乗るなりバージルと ダンテは最上階のスイートに案内された。まるで高級マンションかのような部屋に、バージルは 平然と、ダンテは始終挙動不審にきょろきょろしつつ入った。

「なぁ、何でこんなスイートなんだ?」

泊りで出掛けられる、と決まった時には喜び甚だしくはしゃいでいたダンテだが、今や すっかりおどおどしてしまっている。こんな、一晩千ドルではきかないだろうスイートになど、 泊ることはおろか入ることさえ滅多とないのだら、判らないではないが。

バージルはボーイにチップを渡して帰し、まだ茫然としているダンテを抱え上げた。横抱きに したのではない。文字通り、抱えたのだ。肩に。
いきなりのことに、ダンテは動転してしまったらしい。

「ぅえっ!? なに、え……!?」

ホテルに来る以前にバージルを誘ったことなど、あまりの部屋の豪華さに忘れてしまっている らしい。バージルは「暴れるな」とダンテの尾を引っ張った。「ひゃんっ」と高い嬌声が 上がり、ダンテが手で口を塞いだのが何となく判る。思わぬ高い声が出てしまい、焦ったの だろう。

ぼすん、とダンテを放り投げるように下ろしたのはソファーの上。極上の革が張られた ソファーは、スプリングの軋む音もほとんどしない。
寝心地は、ほっとしたようなダンテの顔を見れば一目瞭然だ。が、バージルが背凭れに 手をつき覆いかぶさると、ダンテは我に帰ったのか、ぎくっとしてソファーから下りようと 躰を捻った。
もちろん、みすみす逃がしてやるバージルではない。

「こんなところでまで、縛り付けられたいか?」

つ、と手首を指の腹でなぞる。ダンテは顔を強張らせ、怯えきった瞳でバージルを見上げた。

「ッ……やだ……」

「ふん? ならばどうすべきか、判るな?」

ぐ、と唇を噛み、眉を寄せ、ダンテは意を決したように自ら口付けを仕掛けて来る。交合は 好きでも、自ら積極的になることの少ないダンテだ。しかも仕種の一つ一つが見える明かりの下で、 となれば羞恥心はいや増す。銀糸から覗くダンテ自身の耳は赤い。

「ん……、……?」

唇を合わせても反応のないバージルを訝り、ダンテが薄く目を開けた。濡れた蒼い瞳に、 バージルは一つ笑んで見せる。

「自分で出来るだろう」

囁きの示唆するものが判らず、ダンテが首を傾げた。バージルはダンテの後ろ髪を掴んで 力任せに引き剥がし、無表情に言ってやる。

「舐めろ」

何を、とはダンテは訊いては来なかった。顔を真っ赤に染め、口をぱくぱくさせている。 バージルはわざと鉄の仮面を着け、ダンテにソファーを下りるよう命じた。

気が動転したまま、床にへたり込んだダンテの顎を、バージルはソファーに腰掛けてぐいと 引く。

「……嫌と言うなら、」

「いっ……やる! やりゃ良いんだろ!?」

バージルが最後まで言う前に、ダンテは必死になって叫んだ。よほど、バージルの仕置と称した 行為を恐れているらしい。バージルは内心で笑ったが、表情には笑みの欠片も出さなかった。

氷の双眸に見据えられながら、ダンテがいかにもおそるおそるバージルの革パンツに手を かける。ボタンを外し、ジッパーを下げる仕種はまるで初めて男に奉仕するかのようにぎこちなく、 バージルの雄を猛らせた。
取り出されたバージルのものに、ダンテがそろりと舌を伸ばす。嫌そうに、しかしそればかり ではないことはほのかに紅潮した頬で判る。羞恥の奥にあるものは、快楽への期待。バージルの ものを自身の内に銜え込むことを、無意識に想像しているのだろう。

「っんふ……ぅ、ん……」

舌でねぶり、たっぷり濡らしてから口内に含む。バージルが以前、教えてやった通りの手順だ。 喉の奥まで銜えて吸うのは、バージルがいつもダンテにそうしてやっているのを、意識してかは 判らないが真似ているのだ。

自分が犯される姿を思い描くうち、自身が既に蜜を垂らしていることにダンテは気付いて いない。

「んぷ……くぅん……」

犬のようなくぐもった声を漏らし、もどかしげに腰を揺らす。そのさまはいかにも卑猥で、 バージルの目を愉しませる。

「相も変わらず、淫乱だな」

わざと冷たく言い放ち、バージルは足でダンテの脚の付け根を踏み付けた。革靴を履いたまま、 踵で柔らかい肉を潰す勢いで力を込める。
びくっ、とダンテが全身を強張らせてバージルの足を掴んだ。

「! ひ、ぃ……っやめ……」

咄嗟に口を離したダンテの唇と、バージルの肉塊とをいやらしい糸が繋いでいる。
バージルはぐりぐりとダンテを踏みしだいた。

「いっ、だ……バ……ジ、ぅん……!」

痛みの向こうにある快楽を感じ始めたのだろう。嫌だと言いながら、ダンテの声は濡れて いる。しかしその所為で、ダンテはバージルに奉仕することを完全に忘れてしまっており。

「誰がやめて良いと言った?」

冷水をかけられたように、ダンテがぎくりとなる。足に縋りつく手を、バージルは「離せ」と ただ一言で切り捨てた。

犬の尾が、ダンテの尻で丸まり震えている。犬の耳はひたすら、何も聞きたくないかのように ぴたりと垂れたまま。バージルを畏れ怯える瞳は、しかし快楽にけぶっている。

バージルの足の下、ダンテの陰茎は、昂ぶったまま衰えるふうもない。

淫猥な、と思う。しかしそれが良いのだと、笑う。心の中で。

「早くしろ。しなければ、お前もそのままなのだぞ?」

直接に触れられることなく、ひとりで下肢を濡らせと言ってやれば、ダンテの瞳からぽろりと 涙が零れた。

「こ、の……変態っ……」

きっとこちらを睨み、唇を噛むダンテに、バージルは自らの昏い慾望が一層強くなるのを感じた。 質が悪いと己でも思う。しかし止めることは出来ない。
ぐ、と。足に力を込めた。

「ぎ、ぃっ……!」

押し殺した悲鳴は、ダンテが苦痛しか感じていないのだと判る。しかしそれでも、ダンテ自身が 萎える兆しはない。

「このまま出す方を選ぶか?」

面白くもなさそうに、言う。冷淡な声にダンテが躰を震わせた。羞恥か、怒りか。おそらく そのどちらもがないまぜになっているに違いない。
こんな状況に貶められても、ダンテはバージルを拒絶することが出来ないのだ。

「……く、そ……ッ」

頬を涙で濡らし、ダンテはバージルの股に再び顔を埋めた。

震える唇に包まれ、バージルはダンテの髪を指に巻き付けながら、笑みを浮かべた。


















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